
カルロス・ゴーン氏 |
クロスカルチャー・マネジメントというのは互いを尊重し、違うバックグラウンドを持った人たちが、効果的に一緒に仕事をすることです。
これは、言うはやすく、現実に実行することはたいへん難しいことです。だからこそ地球はそこに向かおうとしているのであり、難しいからこそ、最も高い潜在性が秘められているわけです。
クロスカルチャー・マネジメントというのは多くの潜在的な要素を、企業にもたらすと思います。イノベーションもその一つです。技術の革新だけではありません。マネジメントのあり方、品質のあり方、コストやマーケティング活動、流通、すべてにおいて革新をもたらすと思います。つまり、いろいろな違いを比較することによって生まれるものだと思います。
人類の歴史を振り返ってみると、物理でも数学でも芸術でも、あるいは社会学などでもそうですが、すべての革新は比較することから生まれています。この革新、イノベーションこそが人類の変化を可能にしました。
違うものを違うと認識するからこそ、何か違うものを新たに見出そうという力が湧いてくるのです。違いを認識して、何かの形で前に進めようとするわけです。マネジメントも然りだと思います。マネジメントの世界だけが違うということはありません。
違いから学ぶことは多々あります。たとえその違いが、脅威をもたらしたとしてもいいのです。なぜなら違った体験、違った文化、違った言葉を話す、それだけで脅威に感じるのかもしれません。違うということで、それがさらに自分に広がりをもたらしてくれることに気づけばいいのです。
革新は違いから生まれます。
違いを管理できる、多様性を受け入れられる、管理できるからこそ長期的に競争力を発揮できるのです。日産の業績は、非常に速いペースで好転しました。競合他社が不可能と思っていたことを、成し遂げたわけです。1年目の成果を発表したとき、多くのアナリストが数字を細工をしているのではと疑い、実際「すべて細工された数字だろう」とまで言われました。しかし月ごとに、年ごとに出荷台数が増えていった実績があり、その実績のすべてが日産の中から生まれてきたのです。
日産の内部にいる人間に聞いてください*。本当に会社は変わってきたか。本当に士気は上がってきたか、その人自身の目標はわかっているか。そういうことは社内の人間が実証してくれることですから、社内の人間に聞くのが一番だと思います。
外からはいくらでも言えますが、中期的、長期的に評価していただければいいと思います。これまでの履歴やデータを科学的に振り返ってみても、わたしたちが今までやってきたことは正しかったと、わたしは確信しています。この多様性を管理することこそが、長期的に生き残るすべであると信じています。
- 出典:
- 国際女性ビジネス会議