【続き】
さっきまでリビングで遊んでいた子犬の姿が、今はどこにも見えない。ココナッツムースをあきらめて、慌ててみんなで家へ戻る。
玄関前。クゥーンクゥーン、ガリガリと、必死にドアを開けて家へ入ろうとしているロビンが居た。
「えっ!? どうやって外へ出たんだ? ルームモニターに映らないわけだよね」あ然とするリョウイチ。
「でもよかった、無事で。ロビン、勝手に外に出ちゃだめじゃない」と、抱き上げて頬ずりするミカ。その半泣きの顔を、ロビンは小さな舌でぺろぺろ舐める。
「いったん外に出たらドアが開かなくて中に入れなくなっちゃったのね。ごめんね、ロビン。あなたのデータをまだ登録してなかったものだから……」
そんなわけで、翌日にはロビンの顔型、虹彩、毛質、鼻息などのデータがバイオメトリクスに登録され、当のロビンは何度も飽きずに玄関を出入りしてカオルに叱られている。叱られてもなんだか誇らしげな顔。
みんなの留守中にロビンがどうやって外へ出たかは、この夏のミステリーだ。