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伊藤元重さん
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2つの面を持つ中国の現実
- 伊藤
こういう負の面を見ると、中国っていうのは、このままいった時にどうなるだろうかと、非常に不安に見えてくるところがある。ですから、中国はどうかと言われてみると、一方で、我々がしっかり学ばなきゃいけないというすごく面白い面、すばらしい面があると同時に、非常に暗い面があったりする。そこが経済の現実だと思います。
- 佐々木
日本はそのうえで、反日感情も考慮しなくてはならない。
- 伊藤
まず、戦前の問題について、我々が、特に現地で活動されている企業人の方がどう直面するかって、すごく深刻な難しい問題で、結局、それを受け入れるしかないんだろうと思うんですよね。しかし、さはさりながら、中国人っていうのは、それだけで日本を見ているかっていうとそうではない。
作家の石川好さんがこの前言っていたんですけれど、日本の漫画家って、大陸生まれが多いんですよ。例えば、『あしたのジョー』のちばてつやさん、森田拳次さん、古谷三敏さんなど。とにかく、こんなにも有名な漫画家たちが中国で生まれたんだと思わなかったので、その人たちを中国に連れていったんですって。
そうしたら、すごいんですね。例えば、ちばてつやさんなんていうのは英雄なんですよ、ある世代にとっては。だから、それも事実なんです。ですから、中国っていうのは、明るい面と暗い面と両方あって、そのうえ近いから、なかなか難しい問題がある。
ところで、企業についての話で面白いと思ったのは、『Voice』という雑誌でトヨタ自動車の奥田会長(当時)と話した時に、彼がこういう話をしていたんですよ。トヨタはアメリカで、1年間に今、毎年1つ工場を作っているというんです。もう、累計で7つ作ったって(8つ目もすでに建設の発表をしました)。で、日本では、過去20年に1個しか作っていないんですね。
というのも、アメリカはものすごい勢いで、今、自動車が売れる。20年前に全体で1,000万台ぐらいしか売れなかったのに、今、1,600万台売れて、おそらくこれは2,100万台まで行くだろう、と。一方、日本は1年間に600万台ぐらいで、段々細っていく。
理由は簡単で、アメリカは、毎年300万人ぐらい人が入ってくるものですから、マーケットが膨らんでいる。だから、彼が多分言いたかったのは、「もう、自動車メーカーにとってみると、日本のマーケットよりもアメリカのマーケットの方が大事だ」ということだと思います。
当然、だから私は聞いたんです。「中国はどうですか?」って。そうしたら、答えがふるっていて、「考えたくない」って(笑)。「どういうことですか?」って言ったら、「あまりにもすごいから、もう、自分は分からない。だから、若い連中に委ねたい」と。
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