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伊藤元重さん
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中国を学ぶなら、この人
佐々木
先程、中国の本を読んでいるとおっしゃっっていましたが、何という本ですか。
伊藤
たまたま、中国経済のいい本が出たものですから。バリー・ノートンの『The Chinese Economy』です。今、アメリカで中国経済の本を読むとしたら、たぶん一番いい人が3人ぐらいいて、その1人がバリー・ノートン。彼は元々、ブルッキングス研究所にいたんですけど、今はUCサンディエゴなのかな。
それと、ニコラス・ラーディと、もう1人が中国系の経済学者でスタンフォード大学で押しているローレンス・ラウ。この3人が中国について一番いいと言われていて、バリー・ノートンが、最近、中国経済の本を書いたものですから、それで読んでいるんです。だから、僕の本の読み方って、「この分野だったら、この人の本を読んだらいい」というのを、なるべく選ぶ。
そういう意味では、大学にいるとすごくありがたいのは、ものすごいネットワークなんですよ。友達をちょっと捕まえて、「この分野で読みたいんだけど、誰の本を読んだらいい?」って言うと、すぐに教えてくれる。これがすごく大事でね。大学の仲間の一番いいのは、何を読んだらいいかとか、何を読んだからよかったっていう情報です。これはものすごく価値がありますよね。
佐々木
そうですね。中国は経済が急成長しているだけでなく、外交でも強くなりました。
伊藤
すごくやっぱりダイナミックですよね。日本から見たら、学ぶ、というとちょっと言い過ぎなんですけど、我々は関心を持たなきゃいけないと思うんですよ。
やっぱり、あれだけの国で、あれだけ悲劇がいっぱい起こったなかから、この20年ぐらいの間にどれだけの発展を遂げたか。やっぱり国の力や、指導者のパースペクティブだとか、いろんなことがあるので、ものすごく勉強になるんです。
学生に言うんですけど、昔、我々の若い頃だったら、「世界経済や国際経済を勉強したかったら、まずアメリカを見なさい」ということでした。でも今は、やっぱり中国経済について、ある程度の知識がないと、世界経済も分からないし、国際経済も分からない。すばらしい材料だと思うんです。
ただ、もう1つ問題なのは、いいところだけものすごく表に出ているから、間違った虚像みたいなものを見てしまうことも事実だということです。ですから、中国の暗い面を見ていくことも必要なんです。例えば、これはもうぜひ、僕、いろんな人に勧めているんですけど、エリザベス・エコノミーっていう女性のジャーナリスト。
名前が面白いでしょう、エコノミーという名前なんですよ。彼女の、『The River Runs Black』という本。日本語でたぶん『中国環境リポート』という翻訳名で出ていると思います。これは今、世界で、僕が知っている限り一番良い、中国の環境問題に対してのレポートなんです。こういうのを見ると、すさまじい中国の環境の問題っていうのがある。そういうところも学ぶ必要がある。
佐々木
それは、ありがたい情報です。
伊藤
あと、学生なんかに薦めるのは、『中国農民調査』。これは中国の二人の有名な作家が、安徽省という中国の貧しい地域に2〜3年入って、どういう苦しい、おかしなことをやっているかっていうことを書いた。あっという間に中国でベストセラーになってね。
それで、彼らは中国の英雄になったんですけど、あっという間に発禁本になっちゃって。それが日本で、文藝春秋から翻訳が出ているんです。これなんかは、中国の農村で、どういうすごいことが起こっているかを、まさにルポルタージュで。
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