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伊藤元重さん
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中国マーケットの意味
- 伊藤
僕も、数字を見ていて、びっくりしたんですけど、中国はWTO、世界貿易機関に2001年に加盟しているんですが、それが実は非常に重要な転換点で、それ以前は、自動車の関税が例えば80〜100パーセントかかったりして、基本的に、海外から売るのはほとんど不可能だった。
ところが、WTOに加盟して、25パーセントまで関税を下げるとコミットして、そこから一斉に世界中の自動車が入った。2001年の1年間に235万台ぐらい売れたって新聞に出ていましたけど、去年は750万台なんですよ。だから、5〜6年で3倍になっている。台数では、あっという間に日本を抜いちゃったわけです。ですから、そういう意味で見ると、日本の企業にとって、中国を、もう度外視してビジネスをするのは、ほとんど不可能なんですよね。
さらに面白いのは、ある家電メーカーの人が言っていたのですが、中国は、昔は、日本の企業にとって「非常に有望な輸出基地」だった。要するに、人件費は安い。ところが、ある時から、中国が、「非常にいいマーケット」になってきた。みんな豊かになってきて。
でも今は、業界では、もう、そうは言わない、と。で、「何ていうんですか?」っていったら、「世界で最も重要な競争の場」だっていうんですよ。「それは、どういうことですか?」って聞いたら、要するに、「中国で競争に勝てない企業は、世界の競争で勝てませんよ」と。
おそらく、彼の頭にあったのは、携帯電話だと思うんですよね。携帯電話では、日本のメーカーはもう全部撤退で、中国で勝っているところ、ノキア、サムスン、モトローラは、グローバルでも勝っている。それはどうしてかというと、やっぱり中国の市場がものすごく伸びているし、大きいし、そういう所でリーダーシップを取るところは世界を取る。
日本の携帯電話っていうのは、日本の、やたらハイスペックなニーズに合わせているうちに、グローバルに通用しなくなってきちゃった。ちょうど、かつて世界最大の自動車市場であった、アメリカのマーケットで勝ちたいということで、アメリカの企業がどんどん大きな車を作っていったら、いつの間にか、それが世界の標準から外れちゃって、日系にやられているのと同じです。
その中にあるメッセージは、いろんな産業に通じていて、要するに、中国のようなマーケットでやっていける企業でないと、グローバルのマーケットで生き残るのは難しい。そういう意識は、おそらく企業の先端にいる人たちは随分持ってきていて、だから、いろいろと政治的には難しい問題があっても……。
- 佐々木
乗り越える必要がある、と。
- 伊藤
やるしかない。
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