ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第87回 金平 敬之助さん

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金平 敬之助さん
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ボールが回ってくるように、仲間と仲良くなる
- 金平
例えば中田英寿選手がW杯の最終戦のあと、7分間、ピッチで仰向けになっていた映像が流れたでしょう。あの画面からも私はいろいろ学びます。あれ、不思議に思いませんでしたか? 私は「どうして、誰も助けに来ないの? 起こしに来ないの?」と思いました。そこに中田選手の限界が見えるわけですよね。それが勉強になる。
だから、中田選手の最大の欠点は、要するに、と僕は想像するんですけれども、「どんな自分だったら、人は自分と共にプレーをすることを喜ぶだろうか」という発想がなかったのでしょうね。そういう配慮ができた選手なら、一人ひっくり返っているとき、だれかが引き起こしにきたと思うのですが。引退間際には大分自覚していましたよ。「自分のことを他の選手が気を遣いすぎる」とか何とか言っていましたから……。
だから、「自分とプレーするのが楽しくてしょうがない自分」をつくらなくちゃいけないのがプロですよ。それが真の名プレーヤーなのだと思います。
- 佐々木
それが新庄と違うんですね(笑)?
- 金平
新庄選手論は長くなります。またの機会にさせていただけますか。話があちこちしますが、福島県の中学から1年から3年生に話をしてくれ、と依頼されたことがあります。女性の校長先生からでした。最初は当然断りました。私にとって中学生はエイリアンみたいなものです。得体の知れない人たちです。先方もこちらを見て得体の知れないおじさんと考えるでしょう。話を聞いてくれるはずはない。こう思って断ったのですけれど、どうしても、言われてしぶしぶ出かけました。講演時間は90分。地獄の90分と思って行きました。
そのときの講演内容は「宇宙船に、皆さん乗れますか?」とか「谷佳知(たによしとも)選手は、田村亮子さんと婚約して幸せになれますか?」とかにしました。その中の一つに、「ベッカム選手はなぜ『ベッカム様』と言われたんですか?」がありました。こんな話をしました。
「ベッカム選手はボールを蹴るのがうまいから有名な選手になったのではないでしょう。 もし彼の人柄が悪かったらどうですか? 友だちが作れない人だったらどうですか? ボールが回ってこないじゃないですか。ボールがこなければ、名プレーヤーになれるはずないじゃないですか。だから、サッカー好きな人はボールを蹴るのを一生懸命練習するのはいい。でも、同時にに、友だちと仲良くなる能力をしっかり磨くことも大切ですよ」と訴えたりしました。
この講演会で私は驚きました。よろしいですか、90分ですよ。670名の生徒さんが誰も私語しないのですよ。ざわつかないのです。居眠りする生徒も皆無でした。私の話がうまいわけではありません。私は、学校のしつけのよさ、家庭のしつけのよさの所為(せい)と思いました。
でも、もう一つ秘密があったのです。たまたま、今年の7月に久しぶりにそのときの女性校長先生にお会いしたのです。そして「あのときはすばらしい生徒さんでした」と言ったのです。そしたら、ぽつりとその校長先生がおっしゃったんですよ。
「金平さん、私ね、先生になったときから、一つだけ子どもたちに言い聞かせてきたことがあります。『人の話を聞きなさい』です。これをずっと貫いていたから、多少、それもあったでしょう」
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