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フリーダイビングトレーナー・アプネアフォトグラファー
菅原真樹さん
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84歳で今も潜る、現役の大海女から学ぶこと
- 菅原
その中に、日本で現役最年長の海女で、鳥取の青谷というところにいらっしゃる海女さんの写真を持っていったんです。84歳、松岡末子さんというんですね。本当にステキな方です。その方に出会って、そこからまあ私はレンズを通して自分の行きたい場所、それから海の達人に、もっと海のことを違った方向で学びたいという気持ちが強くなったわけですね。自分の写真は、やはりそういう達人に出会って、これからいろんなことを学びたいという学びの場でもあるわけです。
- 佐々木
84歳で、今も潜っていらっしゃる?
- 菅原
そうです。84歳で現役最年長の海女で、鳥取県青谷の夏泊というところにいらっしゃるんです。でまあ、彼女に惹かれる部分というのは、シンプルなんですよ。「自分は、海を取ったら何も残らない。海はとっても楽しい、毎日が楽しい」。それだけなんですね。
- 佐々木
海女さんって、1年のうちのどのぐらい、何日間くらい海に潜っていらっしゃるんですか?
- 菅原
この方たちは、海女としての一年は非常に短いです。夏は7月、8月の2ヶ月間、岩ガキを採れる漁なんですね。その前に、4月にはワカメを採る。それから数日、アワビやサザエを採る。それだけなんです。で、その2ヶ月間の中でも、今年は13日しか、台風とかそういう影響で出漁できなかったというので、他の方は、冬も土木作業の手伝いや、その工事の交通整理をする仕事をされたり非常に厳しい。
今、もう19人しかいらっしゃらなくて、若いという方が60歳代。で、最年長が松岡さん84歳なんですね。もうすぐ、やはり歴史が途絶えてしまうんではないかっていうギリギリのところですね。で、この海女漁が夏泊では400年続いている。その歴史の重みに、私もものすごく揺り動かされるようなものがあるんです。
その海女の中でも「大海女」と呼ばれて、末子さんは海女仲間からも一目置かれて、海女漁を続けている。そう言われる理由っていうのは、やはり誰よりも深く潜って余裕を持って漁ができるっていうこともそうですが、やっぱりすごいところは、「このカキは来年、このカキは再来年」っていうふうに水中でカキの大きさを見て、選びながら採ることができること。ですから、量よりも質で採るわけですね。
他の海女さんは根こそぎ採るわけです。浅いところにしか潜れないので、みんなが数の競争なんですね。潜る場所争いも凄まじい。次の環境を考えない。今が必死という感じ。
でも松岡さんの場合は、ちゃんと水中の地図が全部頭に入っていて、いつ行ってもその場所は一人、水深も深くて流れのある場所だから、他の海女が入れない。陸上でもここに沖の三つ石っていう名前のポイントがあって、その数メートル先にこれくらいの大きな岩や、瀬があって、そこにカキがいま何個ついていて、今年採れるのはこれとこれ、とちゃんと言えるんですね。
で、透明度の悪く水底が見えないところでも、ちゃんと水面に浮かんで「山たて」をして、この岬のこの端とここをちゃんと合わせて、距離を目測で測って、そこへ行くと自分の行きたい瀬がちゃんとあるわけです。で、そこで確実にカキを採って来て上がってくる。それが20メートル。
- 佐々木
20メートルの深さまで潜るんですか?
- 菅原
はい。若いときはいつも簡単に、フィンなしで30メートル潜れたんですね。
- 佐々木
フィンなしで。そうか、海女さんって、今はフィンをつけてるんですね。
- 菅原
今はつけてます。はい。昔は、着物を着ていました。
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