ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第135回 リシャール・コラスさん

135 |
リシャール・コラスさん
|
|
|
シャネルのやるべきことは明らかです
- 佐々木
社長として、シャネルの中でとても重要な日本市場で経営をされているわけですが、消費者の目も厳しいし、それでいて不況で日本は大きな打撃を受けている。そういう経営の立場と、それから小説を書くことと、もちろんご家族との時間や健康の管理と、客観的にはご多忙だと思うのですが、でも、大変余裕がおありで。
- コラス
今は余裕がすごくあるんです。余裕というのは時間の余裕ではなくて、マインドの余裕ですね。
私は去年までは欧州ビジネス協会という仕事をしていて、非常に忙しかったですけど、余裕というのは時間や体の余裕とかでなくて、心の余裕なんですね。今の方が私は余裕があって、頭の中はそれぞれのことがとてもクリアーになっています。確かに今はこの経済状態だし、非常に厳しいことは事実ですけど、頭の中で、経営者として、シャネルのやるべきことは明らかで、だから私はリラックスしているんですね。
本当は売上が上がらなければイライラするところだけど、逆に言うと、危機って日本語で書くと「危険の危」と「オポチュニティ、機会の機」という言葉だから、「危険」を忘れて「オポチュニティ」だけを見ましょうと。
私はカルロス・ゴーンさんと仲がいいんですよ。久しぶりにフランス大使館のイベントで会ったら、彼がすごく日に焼けて、痩せて、元気な顔をしていました。こんな危機でね、我々の産業も苦しいけど、自動車産業は我々よりももっと苦しいはず。そしたら彼は「私は危機が好きだ」って言ってました。
「なぜ?」って聞いたら、「危機のおかげで、いろいろ普段はやらないことがやれる」って。さらに、「お痩せになったのは?」って聞いたら、「やっぱり自分の規律からスタートしないといけないから」って。
それがきっかけになって、私も規律正しくし始めたんです。
自分の規律がなくなると身のまわりの人たちはどう見るだろうかと。私と一緒に仕事をしてくれる人間は、私をどう見ているかと。
- 佐々木
セダクティブでなくてはいけないし。
- コラス
まあ、自分がセダクティブかどうかはわからないけれど、まずね、そこからスタートしようと思って。そしたらものすごく規律のある生き方に戻って、わずか2カ月で6キロ痩せた。すごく簡単なんです。車をやめたんですよ。
- 佐々木
ゴーンさんは悲しむけどね。
- コラス
そうそう。炭水化物をやめて、地下鉄、階段、ジムで。そうすると、みんなが分かるんですよ、コラスはちゃんと規律を守ってる、って。そして自分もしっかりしなければならないと思うでしょう。
だから時間の余裕というよりマインドの余裕。いつも言われるんですけど、「お前は小説を書く時間がどこにあるんだ?」と。私の答えは「ゴルフをやらないから」です。ゴルフをする人に、「お前はゴルフをする余裕がどこにある?」って誰も聞かないでしょう。もちろん小説を書くには集中力が必要ですけどね。10分では書けない。
- 佐々木
それはよく分かります。ある程度の時間の塊がないとね。よくわかります。
14/18
|
 |
|
|