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山田昌弘さん
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消費によって自己実現せざるを得なくなっている
- 山田
よく言いますけど、前近代と、ポスト近代とよく言われますけど、ポスト近代的な意識が接合したまま、つながってきちゃった故の現象ですね。専門的になりますが、結局、今いろいろなところで言われているのは、仕事によって自己実現するというのは世界的にデクライン(人気がなくなり)してきて、消費によって自己実現せざるを得なくなっている状況になっている。
となると、働かなくても消費できるという状態が最も自己実現できるような状態になっちゃったわけなんですよ。今、周りで調査を見てみると、生活満足度が高いのは、若い人と高齢者と主婦なんですね。
- 佐々木
その満足度というのは、今の生活に満足しているか、という質問ですね。
- 山田
ええ。よく考えたら、外で一生懸命働かないですむ立場の人が多く含まれるんです。
- 佐々木
本当ですかって聞きたくなるようなデータです。
- 山田
逆を言えば、仕事の世界というものが本当に二極化してしまった。つまり、単純労働が増えてきちゃったということが1つあるんですよね。昔だったら工場に入れば、仕事を覚えていって、工員さんになって、工場長になって、管理職になれるというのがありましたけど、今工場の現場だと、少数の正社員と、単に検品とか組み立てだけをする派遣社員に分かれちゃっています。あと、商売の現場でも、昔は商店にでっち奉公みたいに入って、どうやって物を売るかという仕事を覚えていったわけですが、今はスーパーやコンビニとかを見れば分かるように、物を売る喜びが感じられるような人は少数です。POSシステムでピッピ、ピッピとやっているだけじゃないですか。それしか使い方はないですよね。ハンバーガーショップでも「ポテト要りませんかと言え」って言われるわけですからね。
- 佐々木
でも私なんかは起業家だからなのかもしれませんが、仮に「ポテトは要りませんか?」って言えと習ったら、それを言いながら、そこから何か楽しみを見いだしたり、自分らしい工夫をしたり、人と違うことを考え出したりするタイプですね。
- 山田
そうだと思いますよ。でも、私がインタビューしたフリーターの人は、仕事はただ、時間が経つのを待つだけだと言う人が多かった。仕事が終わった後の消費しか楽しいことはないのです。
- 佐々木
だからそう思うと、今の仕組みや単純労働といわれるところの人口が多くなったことが問題なのではなくて、やっぱり根本は自分から価値を見いだすとか、さっきのゼロに向かっていくのではなくて、プラスをつくろうとする意欲だったり、ということが全体的にしぼんでいるがために、単純労働といわれるものが、単純労働でしかなくなってしまったということではないですか?
- 山田
そうですね。アメリカは格差社会といわれながら、そして、日本と同じように単純労働が大量にありながら、まだ意欲が保たれているというのは、そういう期待があるからだと思うんですよね。
- 佐々木
「Yes, we can.」と言える社会。
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