ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第117回 岩切茂さん

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建築家・株式会社TEAM IWAKIRI JAPAN代表取締役
岩切茂さん
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なんだか、ちょっと日本ってインチキ?
- 佐々木
でも、アートとかモノづくりといっても、建築っていうのは、また特別だと思うのですが、なぜ建築の道に行こうと思ったのですか? なぜ丹下健三事務所に?
- 岩切
大学を出て、イタリアに建築で留学したんだけど、ものすごいカルチャーショックがあったんです。
僕らが学生の頃、丹下先生っていうのは巨匠で。でも当時、大学で建築の勉強をしているときには、もっと若い世代の建築家の人がたくさん出ていたから、自分自身としては、丹下先生っていうのはものすごく過去の人だ、ぐらいに思っていたのね。
建築の世界はもっと前に進んでいるから、先生のことを古典みたいに思ってたんだけど、ヨーロッパに行ったら、全然時間の流れが違っていて。
イデオロギーとか思想とかは分からないですけど、日本って、年が10歳違うだけで、ヨーロッパの建築の潮流的に言うと100年ぐらい違う事を、平気で言うんですよ。分かりますか?
だから、丹下さんが80歳だとしたら、70歳の人は全然違うことを言い始めている。60歳の人は、またさらに違うこと言ってて、で、50歳は…… ってやっているんですね。
でもね、このギャップはヨーロッパに持っていくと100年分ぐらいの時間の流れがあるんですよ。
僕にはそのぐらい大袈裟に感じたんだけど。だから、何だか、ちょっと日本ってインチキ? 分からないな、と。
フランスの建築家でル・コルビュジエっていう建築家がいるんですが、丹下先生よりもっと古い、本当に素晴らしい巨匠なんだけど、ヨーロッパでは、僕らぐらいの年の人間が、真剣に、その人の勉強をしていて、「建築のスタートはそこからだ」ぐらいの勉強のしかたをするんですよ。ル・コルビュジエって亡くなったのが1965年、丹下先生は1913年から2005年なので、時代的にかぶってるんですよね。
だけど、僕が大学で勉強したときは、そんな感覚でそういう時代の人の作品とかを見ていなかった。丹下先生が近代建築の祖を作った素晴らしい人だというのは分かっていたんだけど、それが今、自分が設計計画をやるときの源になっているという意識は全然なかったんですよね。
ところがヨーロッパの学校に行くと、まだそういうことを勉強していて、「何なんだろう?」「ちょっと待てよ」と。日本で僕がいろいろ勉強してきたのは、あるサイクルで、すごくデザインを消費する感覚というか……。
- 佐々木
薄っぺらというか。スピードが速いんだけど、積みあがっていくというよりも、ただ、ペラペラ、上を回っているような感じですね。
- 岩切
そう。当てはまっているかどうか分からないけど、日本で言うと、たとえば団塊の世代の人達の学生運動の頃の話と、そこから10年たった学生達が考えていることと、また10年たったときでは、もう全く違う人種じゃないかって思うぐらい、日本人の特性なのかもしれないんだけど、マインドチェンジができちゃってる。
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