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平田 オリザさん
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放浪すればいいってもんでもない、って感じなんです
- 平田
フランスでも、よくインタビューでこの話を聞かれるんですけど、フランス人は自転車が好きなので、「人生観が変わりましたか?」とか。でも、まだ16歳だから、変わる程の人生観もまだなくて、どちらかというと、旅自体が全部トータルで人生だし、そうじゃない人生っていうのは想像できないわけですよね。16〜17歳だからね。
- 佐々木
確かにそうですよね。旅に行かなかった、という道がない。
- 平田
だから、分からないんですけど。ただ今、劇作家という仕事をしていて、演劇というのは、いい人も悪い人も登場するんですけど、悪い人にも、それなりの理屈とか人生とかがないとダメなんですね。そうじゃないと、リアリティーとか、役の厚みが出てこないので。そうすると、16〜17歳の、まだ頭も心も柔らかい時に、いろんな価値観に触れたっていうことは、一番役に立っていると思うんですね。
それは、ただ、なかなか難しいところで、一長一短あって。ものすごく相対的になってしまうところもあると思うんです。何でもあり、みたいなところもある。ただ、本当に16〜17歳だったから、それも含めて、よかったと思うんですね。
ご承知かもしれませんけど、1年とか2年とか、そういう放浪の旅を続けていると、皆、必ず相対化していっちゃうんで、どうでもよくなっちゃう人って、やっぱりたくさんいるんですよ。
結局、そこから何かを生み出したりっていうバイタリティーさえもなくなってしまうような人もたくさん見たので、こういうのはダメだなと思って。
- 佐々木
それは、頭脳とか思考とかがストレッチされた時に、ストレッチされたから、戻ってきて柔軟に幅を活かせるようになる人と、伸びきっちゃう人がいるっていうことですか?
- 平田
そう。でも、大抵伸びきっちゃうんですよ、放浪タイプは。
- 佐々木
いい例かどうか分かりませんけど、インドに行ったら、そのまま住み着いちゃうみたいな、そういう感じですか(笑)?
- 平田
そう。だから、小田実さんとか沢木耕太郎さんは特殊な例であって、普通の人は、ああはならなくて。留学とかの方がいいと思うんですね。今は、結構、ダメな留学もたくさんあるけれども、やっぱり放浪すればいいってもんでもないっていう感じなんです。そのこともよく分かったので。
- 佐々木
危険な目にも遭って?
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