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伊藤元重さん
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人前で話をするって、いいことですよ
- 佐々木
授業は、また講演とは違って、やっぱり全然違いますからね。
- 伊藤
そうですね。ひょっとしたら、あまり自分で言うのもおかしいですけど、人前で話すことに才能があったのかもしれません。というのは、最近はそういうことはないんですけれども、東大で初めて講義をした最後の日に、二人の女子学生から花束をもらったんですよ。それは東大始まって以来じゃないかって冗談を言われたんですけどね。話すのが好きなのかもしれませんね。やっぱりサービス精神から、努力するんですよ。
- 佐々木
それは、内容の面白さだけでなく、ノンバーバル・メッセージという、私が先生に申し上げる言葉ではないと思うんですけれども、大変チャーミングでいらっしゃるし(笑)。
- 伊藤
それはどうか分かりませんけれどもね(笑)。でも今は、こんな好々爺になっちゃったけど、昔は怖かったんですよ。ある時、ゼミの学生の出来が悪かったんですよ。で、どうしようかなと思って、突然、ぱっと立ち上がって、部屋を出て行っちゃったんですよ。あとはもう、学生は大変だったみたいですよ、お通夜みたいで。それで、「どこが悪かったんだ」というような反省して、後で学生が謝りに来るんですよ。だから、きっとその頃は怖い先生だったんだと思いますけれどもね。最近は、さすがに私も、そうしたことができなくなっちゃったんですけど(笑)。
- 佐々木
いやいや。当然、内容も展開が面白い。その上で、やっぱりデリバリーが大変お上手ですから。
- 伊藤
人の前で話をするって、やっぱりいいことですよ。だから、講演って、僕すごくいいと思います。でも僕も、結構いろんな修羅場もくぐっているんですよ。
- 佐々木
どんな修羅場でしょう。
- 伊藤
30代前半、本当に若い頃に、当時、ある大手証券会社に、支店長さんばっかり集めて、大掛かりな研修があったんです。それで当時、大御所の先生から頼まれて、「君も、1つやれ」と。
支店長さんっていったら、まさにその現場の、しかもみんな、僕よりも10歳ぐらい上なんですよね。そこで金融の話をするっていうので、最悪ですよ。もう、非常に敵対的な目でこちらを見て、その連中をやり込めなきゃいけない。だから、学者として非常によかったのは、そういう場数をいっぱい積んだ、と。
- 佐々木
要するに、学生に対してだけでなく、さまざまな立場の人たちの前で、リアルな、今の旬の話をする体験。
- 伊藤
学者としても、僕、今でも覚えているんですけど、一番最初につらい目にあったのは、大学卒業時。アメリカって、Ph.D.が終わる頃、ジョブマーケットに出るんですよ。アメリカの経済学会が年に1回あって、そこに、いろんな大学がブースを出して、優秀な学生を最初に選考するんです。書類選考とかに通った人は招待されて、プレゼンテーションをするんですよ。
で、僕は結構いろんなところからジョブミーティングのオファーがあって、シカゴ大学のビジネス・スクールから、「関心があるから来てくれ」って。で、行ったら、向こうは10人以上いるんですよ、怖そうな先生が。こっちは1人、子羊で、しかも英語も下手。随分準備して。でも、結局、討死ですね。やられちゃって。
- 佐々木
そんなことがあったのですか。今は、テレビでのコメント機会もたくさんありますが、本当に分かりやすく、安心して聞かせていただいています。
- 伊藤
そうですね。最初の頃はNHKの番組が随分多かったんですけれども。あの頃はまだ素人ですから。やっぱり結構、努力したり苦労したというのは、結果的には非常によかったですね。やっぱり、1分で人にものを伝えるっていうのは、すごく重要なことですよね。
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