ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第91回 Carol Bellamyさん

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ワールド・ラーニング代表兼CEO、前ユニセフ事務局長
Carol Bellamyさん
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国際ニュースは、「テロ」だけでないから
- ベラミー
もちろんです。でもこれはアメリカ人に限られたことではありません。ただ現在、世界唯一のスーパーパワーとなったアメリカは、自分の味方となる同盟国やパートナーの国々を獲得する必要があります。単独主義的外交政策は、ベストではないと思うからです。
ただアメリカは大きな国なので、どうしても外国が見えにくくなっているのかもしれません。グローバルな知識を増やすということは、他の国や地域の良いところだけでなく、欠点もきちんと知ることです。良い事ばかりの国も、悪い事ばかりの国も、存在しないでしょう。ただ海外の国や地域に関する不合理な考え方をなくすことが目的なのです。
2001年9月11日の同時多発テロ事件以後、アメリカのテレビで放送される国際ニュースは、「テロ」と「テロリスト関係」にほぼ限られてしまい、それ以外の海外ニュースはほとんど取り上げられません。これは好ましい状態ではありません。
2006年の夏に、私が主催する国際交流プログラムに参加して、トルコで5週間暮したアフリカ系アメリカ人の女子高生は、こう言いました。
「トルコに行くまでは、イスラム教徒について特別の感情をもっていなかった。でもトルコから帰ってきて初めて、アメリカ国内におけるイスラム教徒の関する報道の多くが、往々にしてネガティブなものだということに気づきました。公正性に欠ける報道で良くないと思います」と。
実際にイスラム教の国に行き、イスラム教徒のホスト・ファミリーと親しくなり、楽しい経験を積んできたからこそ、こういう素直な発言が出たのだと思います。政治的な意図を持った発言でなく、ただひとりの高校生が、自分の個人的経験から、「こんなのは良くない! 間違っている!」と思ったので、そう言っただけなのです。海外経験が人々の心を開いていく一例です。
- 佐々木
どうすれば、一般的なアメリカ人が外国に旅行する機会が増えると思いますか?
- ベラミー
外国に出かけて行くアメリカ人の数は増えていますが、問題は国際理解を深めるために、何をするべきか、でしょうね。
そこで私たちは、学生たちを現地の学校に1学期ほど短期留学させて、そこできちんと単位がとれるように勉強しながら、現地の文化や歴史を自分の肌で感じることができる留学プログラムを提供しています。
- 佐々木
それはいいですね。
- ベラミー
留学先でアメリカ人の生徒たちは、ホスト・ファミリーと一緒に生活をして、現地の言葉を学び、文化や生活様式を学んでいきます。もちろん、このような留学プログラムは、ほかにもいくつかあると思います。ただ私たちのプログラムでは、現地の学校に編入して、きちんと単位を取ってくることを義務付けています。
それから、外国人を対象とした、アメリカでのセミナープログラムも、効果的だと自負しています。
アメリカにも、まだ世界に提供できる知識やノウハウがたくさんあるからです。大学院生を対象にしたプログラムは、アメリカ人に限られていません。国籍や出身地に関係なく、生徒たちにはNGOの管理運営の仕方や、問題の解決法を教えています。こうすることで、小さな共同体のリーダーや組織の指導者の育成を行っているのです。
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