ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第87回 金平 敬之助さん

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金平 敬之助さん
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朝夕、そういう配慮をしているから
- 佐々木
わあ、よくわかります。そんなふうな言葉を掛ける人は、本当によい教育者であり、リーダーになれますね。
あの、そんなふうに言葉掛けをお教えになりますよね? それでも、できない人がい続けたときは、それはどうやって褒めるのですか(笑)?
- 金平
相手の身に心を行き届かせるっていうのは、リーダーシップの基本ですから、なんとか気づかせるようにもっていきますけれども、やや絶望的な人も、いることはいますよ。僕も経験していますが、どうしようもない人が……。特に、とても嫌な言い方しますと、エリート学校に行った人ほど、こういう感性が育っていないことが多い。つまり、日常、自分の気持ちを察してもらうことはあっても、察することをしないで育ってきていますから……。
ここで、ちょっと徒然草の話をさせていただきます。三十二段はこんな内容です。兼好法師が知人と月見をして歩いていた。知人が「ちょっと寄るところがあるから」と、ある家に入って行った。見ると、荒れた家だけど何となく風情がある。「この家の主(あるじ)って、どんな人なのかな?」と興味をもった。うろうろしているうちに、知人が姿を見せた。その家の主も見送りに出てきた。物陰から見ていたら、主は知人の姿が見えなくなるまできちんと見送った。それからもう一回月を見て、その余韻を楽しむがごとくゆっくり家の中へ入っていったという。
それが、見送ってすぐに入って行ったら……。そうでしょう。団地で「さようなら」と言って5〜6歩、歩き出したらガチャンと戸を閉められると嫌ですよね。この主はそんなことをしなかった。このような配慮ができるのはどうしてなのか。兼好法師はこんな結論を出しているのですね。「かような配慮ができることは、要するに、朝夕、そういう配慮をしているからだ」って。普段が大切というわけです。斎藤佑樹投手のしぐさのときにもお話しましたが……。
- 佐々木
そうですね、本当にありますよね。私などは、いまのお話からいえば、それこそ宅急便屋さんが行った後にドアをカチャンと閉めるのも悪くて、ずっと何秒か、ドアのところに立っていたりしますものね(笑)。
- 金平
それはありますね。
- 佐々木
まだ門も出ていないのに、ガチャンって閉めちゃ悪いなって思って、車が動くまでドアのこっちの陰でずっと待って、耳を澄まして、それから、鍵を閉めたりなんかしていますけれど。でも、そういったことって、日々の生活の中で子どものときに覚えるのではないでしょうか。大人になってからでも、人を見ながら覚える……。
- 金平
そうそう、いま、佐々木さんが、宅配便の人にもすぐ閉めるのが気の毒かと思って、とおっしゃったでしょう。それができる社長さんってすばらしいですね。そういう気持ちを持っている社長さんだったら、私もすぐ部下になって仕えたいくらいです。
- 佐々木
とんでもございません(笑)?
- 金平
そのやさしさに尽きているかもわかりません。会社の人たちが生きるかどうかっていうのは。
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