ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第82回 丹下 一さん

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丹下 一さん
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練習でなく、稽古
- 佐々木
あと、俳優でい続けるための修行をしてるっておっしゃった、その修行のあり方っていうのが、例えば、佐々木かをりが佐々木かをりという人として生きていかれるようになる、ということですよね?
- 丹下
そうですよね。よく、稽古場に来て、「今日の練習は」っていう言葉を使うとき、そのときだけは必ず訂正するんです。「練習って言うのはやめましょう。稽古って言ってください」と。英語で言うと"practice"って言い方になって、「実践」っていうのもありますよね。毎回「遊んでください」という風に言うんですね。
すごく大好きなロックのギタリストがいい言葉を言って、イー・ウーマンでも、ちょっと引用して書かせてもらったんですけど、『僕はアメリカからイギリスに行ったとき、「お前は本当に天才だな」ってよく言われた。僕は絶対天才なんかじゃない。僕がどんなに毎日毎日必死になってプレイしているか、誰もわかってない。でも、言わせてもらうと、僕は「練習」したことは一度もない。そして、毎回毎回、必死で「プレイ」しているだけなんだ』って。
格好いい! こんなことが言えるから天才なんだよ、っていう。でも、考えてみたら、いつでも、そう言うんですけど、人生なにが起こるか本当に分からない。
- 佐々木
そうなんですよ。全部本番。
- 丹下
もう、毎回毎回、すぐ本番。「こんなときに限って」っていうことばっかり起こるでしょ? で、そういうふうに思っていれば、怖いものはないんですよね。
同じなんですね。舞台も、仕事をしているときも。例えば、なんにも知らないのに僕も会社なんて作って、「どうしよう」なんて思って、もう、なにもわからないから、それこそ毎日毎日、「へえ、そういうもんなんだ」とか、「えっ? これをやってみるの?」で、これとこれと、これをやってみたりすると、「大変じゃん、これ!」って。
- 佐々木
私なんて、20年たってやっとわかることもいっぱいありますから(笑)。
- 丹下
そんな、脅かさないでください。どうしよう。大きな海の中を必死で泳いでいるなっていう感じなんですけど、「そんなもんなんだよ」っていうふうにいつも思うんですね。
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