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池上 彰さん
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やさしい言葉で、しかも自分流に
- 佐々木
本の中に、「手垢のついた表現では何も語ってないのと同じ」と書かれていらっしゃいますよね。池上さんはどういう風に、言葉を見つけていかれるんですか。たぶん、難しい単語を増やしていくことではないと思うので、説明の仕方を工夫するということですか?
- 池上
そうですね。最初の頃は、ついつい難しい熟語を使っちゃうんです。そうすると、急に子どもがきょとんとした顔をするわけです。いかん、いかん、こんなやり方ではだめなんだってことに気がつくわけですよね。それで違う言い方をするということです。気がつくと、いわゆる熟語、大人の世界で普通に使っている熟語ってまったく使わなくなっているんですね。非常に言葉使いが幼稚になっている。
- 佐々木
そうでしょうか。それが人気の秘訣になっていると思うんですけれども。
- 池上
ええ。たとえば、公的資金の導入。公的資金ってなんだよ、国民の税金じゃないかっていうわけです。不良債権って何だ、貸したら返してもらえないお金、ですよね。そういうことをやっていくと明確になりますね。公的資金を導入する、公のお金を使うんだと。
- 佐々木
公的って、あなたのお金ですよ、ということですね。
- 池上
あなたの税金使うんですよって言われたら、えー、なんでそんなことに使うんだよ、ってわかりますね。
- 佐々木
単語を平たく説明することがいかに画期的か。お話伺っていて思い出したのが、上智大学で、英語で中国哲学を勉強していたときのことです。日本語だと、「子曰く、なになにべからず」みたいなものが、英語では”He says, ‘Don’t do …’ ” なんて書いてありました。そうだったのか、どうして日本語では難しく習ってきたんだろうと思いました。
- 池上
ドイツ哲学ってドイツ語で読むとね、すごくやさしいんですよ。やさしいって変だけど。
- 佐々木
ドイツ語で読むと!?
- 池上
カントにしても、ヘーゲルにしても、マルクスにしても、ものすごく日本語って難しいでしょう。
- 佐々木
はい。なんか難しくしようとしているというか、簡単にわかってはいけないっていう意図が感じられますよね(笑)。
- 池上
ドイツ語で原書を読むと、もちろんドイツ語も難しかったんですけど、なんだよ、って、こんなことかよって思いますよね。
12/29
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