ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第32回 北澤きよみさん

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フィオレッラ・デル・コンテ(メッゾ・ソプラノ、コントラルト)
北澤きよみさん
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竜宮城から、戻らなかったんです
- 佐々木
ところで、大聖堂の鐘の音が導いた合格の日から、どんな生活になったのですか?
- 北澤
この研修制度は2年制で、授業でオペラの舞台を勉強するところ。オペラ歌手にとってスカラ座といえば、みなさんがあこがれる登竜門です。一学年に外国人が8人。韓国人が2人、日本人1人、ほかにはオランダ人、アメリカ人、ドイツ人……。その研究生として合格してしまって、あれよあれよという間に入学しなければならなくなったんです。
イタリアのビザを取るのには、当時1カ月から3カ月かかるといわれていたのに、スカラ座の合格サインをもらっていたので3日で下りちゃったんです。すぐにミラノに飛び、授業が始まりました。
- 佐々木
それが23歳の秋。そこからずっとお住まいになっているんですか?
- 北澤
そうですね。ミラノには、スカラ座のオペラ研修所のオーディションに合格してから、ずっといます。
- 佐々木
じゃあ、2年の制度が終わっても帰らなかったんだ(笑)。大学は休学されていたのに?
- 北澤
わたし一人っ子だったので、親に「2年たったら必ず帰って来いよ」と言われていたんです。でも、竜宮城が楽しくて楽しくて、帰りたくなくなってしまった(笑)。海の中ではないけど、海の向こうの竜宮城!
- 佐々木
じゃ、ご両親からしたら、話が違うだろう、ということですね。
- 北澤
そうです。親は2年で帰ってくると思ってた。一人娘ですし。それでついに仕送りを絶ったんです。そうすれば、わたしが「帰ってくるしかない」と思うと思ったのでしょうね。でもわたしは、帰らない。自分の力で生きてやろう。歌で生きてやろう!と思った。そう思うと、ドイツやフランス、イタリア国内も、どんどん仕事の話が入ってきて忙しくなって。
- 佐々木
その生命力、好きです。
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