ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第142回 吉岡徹治さん

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(株)プライム・ヒル代表、ジュニアゴルフマジック監督、代々木高等学校ゴルフ部監督
吉岡徹治さん
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6試合目が、あのプロの有名になった試合なんです
- 吉岡
彼が入る3年前から、プロの試合にどのぐらい高校生が通用するかっていうのを実験的にやっていまして、ちょうど3年間育てた自分のチームのエースの子が、プロの試合で6位に入ったんですね、その秋に。
それで少し手応えを感じていたんですが、その子が卒業して行くときに入ってきた石川君が、僕が手塩に掛けて3年育てた、その日本チャンピオンの宇佐美君っていう子とほぼ同じかそれ以上のプレーをするもんですから、比較したときに、6位に入った宇佐美と同じかそれ以上だな、この中学生は、と。「この子、天才かな?」と一瞬思うわけですよ。「じゃあ、天才にしちゃえ」と。自分の気持ちの中で。だから、会う人会う人に、「今度出る石川は天才なんだ。これ、出してくれ」と。
で、彼が中3のときから、プロの試合と見かけたら、スポンサーなり何なりに電話して、「予選会でもいいから出してくれ。選考会でもいいから出してくれ」と。で、「天才なんだよ」と、5〜6試合に出していったんですね。お金がないときは、知り合いの人に「この子、天才なんだから連れていってくれ。飯だけでもいいから食わしてやってくれ」と頼んで。
そうこうしているうちに、6試合目が、あのプロの有名になった試合なんですけど、「じゃあ、俺も4月に教員を辞めたから、連れていってやるよ」と。で、僕とかみさんとで連れていくわけですよね、1週間。ただ、奇跡的に優勝した後に……。
- 佐々木
感激したでしょう?
- 吉岡
いや、とんでもない。手元に残ったのは、1週間のホテルの請求書、プレーの請求書。30万とか、残るわけですよ。
- 佐々木
あ、賞金なかったんでしたっけ?
- 吉岡
ないですよ。僕と奥さんと石川とキャディーの領収書が30何万残って、「これ、どうしよう」って。皆は「おめでとう!」って。でも、アマチュアなんでね。僕は「賞金くれ」って言いたくなったんですよね。
- 佐々木
そうか、アマチュアだから。
- 吉岡
もらえないんですよ、一銭も。
- 佐々木
じゃあ、あんなに話題になったのに、請求書で真っ青、みたいな。
- 吉岡
「これ、どうしよう」って。1週間もいる予定じゃなかったじゃないですか。予選1回やって帰るつもりですから、3日ぐらいで帰って、と思っていたのに。それがもう3倍ぐらいの請求書が4人分で三十何万残って、「どうしようかな」と(笑)。
「これ、学校に持っていったら切ってくれるのかな」とか、本当に「今後どうしよう」っていう。「このペースで試合に出るのは不可能じゃん」みたいな。嬉しくも何ともない。「どうしようかな」と。
- 佐々木
嬉しくもないんですか?
- 吉岡
いや、「やったなあ」ぐらい。いや、「どうだ!」みたいな。「どう? うちの子、格好いいでしょ。いい子でしょ。うまいだろ」みたいな。そういう変な優越感はありましたけど、まあ元の生活に戻るんだろうな、と思っていたし。
- 佐々木
「どうだ!」も一瞬のことで、クラクラと30万が気になった。
- 吉岡
そうですね。「この30万の請求書をどうしようかな」とか「今後どうしていこうかな」とか。
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