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ビジネス コンサルタント、レキシコン アソシエーツ 代表、カクタス・ジャパン顧問
ニヤンタ・デシュパンデさん
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5000〜6000年の歴史をもつ聖典の一番最初に
- ニヤンタ
自分の生まれ故郷というか、国籍、国というのは、アイデンティティになるけれど、宗教というのはパーソナルな部分です。自分が信じるか、信じないかの世界なので、どちらかというと私は、宗教はアイデンティティにはならないと思っているんです。
宗教というと、拝み方、どういう神様を信じて、どういうストーリー、どういう神話を信じているか、ということですが、それはあくまでも個人の選択で、今日はこのストーリーを信じているけれども、明日はそれを信じないかもしれない。別の宗教に改宗している可能性だってあるんですよね。
- 佐々木
そうか。母国語や、そこにまつわる理解、ものの見方は、育ちの中で身についていくものであり、柱なので、小さなうちに育てなきゃいけない、ということですね。
- ニヤンタ
はい。だから、宗教というよりも、ちょっと違う定義にしたいと思うんですけれども、思想といいますか、哲学はアイデンティティにつながると思っています。
- 佐々木
そうですね。
- ニヤンタ
それは文化の違いに近いものがあります。これはとてもインド独特の現象なんですけれども、日本はどちらかというと単一民族に近いところがあるんですけれども、インドには、こんなにたくさんの言葉があって、いろんな民族がいて、インドは違う状況にずっと置かれてきましたから、ダイバーシティがまた違うんです。しかし、インド人をインド人としてつないでいるものは、人種や言葉や宗教じゃないんです。インドの思想なんです。
- 佐々木
たとえば、どういう思想ですか?
- ニヤンタ
たとえば、インドの5000〜6000年の歴史をもつ聖典の一番最初に出てくる、いくつかの言葉があって、それがインドの価値観であり思想なんです。たとえば「すべての人類は家族である」というのが、1つのインドの思想なんです。だから、とてもボーダーレスなんですよね。人種も国境も関係なく考えた。
当時、まだインターネットもないし、そういった交通手段も何もないときに考えたのは、なかなかのことだと思っているんです。でも、考えてみると、やっぱり、どこでも、そういうところは変わらないんですよ。いろんな国の人と接してみて、結局、見極めると、本当に同じなんですよ。同じ本能があって、同じ家族愛があり、兄弟愛があり、同じように、泣いたり笑ったり、というようなことや、性格のいい人と悪い人と、犯罪者と人格者と、いろんなものが、どこの社会にもあって、だから本当につながっているんだな、というところがあるんです。それが根本的な思想の1つです。
- 佐々木
そういった思想は家庭で教えられるんですか? それとも小学校や学校教育の中で?
- ニヤンタ
学校自体は無宗教ですから。ただ、宗教の思想を教えることは、もちろんないです。
- 佐々木
ただ、哲学とかのコースというか、それは日本だったら道徳という名前の授業だったり、倫理だったり、授業があります。
- ニヤンタ
インドでは、そういうふうに切り離されていないんですよ。教師たちは意識して、いろんな授業の中で、そういった価値観を教えていくということを、常にやっています。
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