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Darcy Neillさん
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女性の識字率を上げるというテーマも、私のビジョンの一つなのです
- ニール
ビジョンの話ですが、一つ話をしますね。
私がいたのは、ヨルダンのとても保守的な小さな村での出来事のことです。村の女性達は、全身が隠れる伝統的な服を着ていました。その村の女学校に、私たちは平和部隊から英語の教師を派遣する準備を進めていました。
男女の住み分けが厳しいヨルダンには、共学の学校がないのです。学校もクラブも、男子と女子で別れていました。もし三年生まで一緒の学校に通っても、それより年が進むと、男女は別の学校に入れるのです。
ヨルダンの教育相が、本当にすばらしい人で、彼のおかげもあって、また女王のおかげもあり、天然資源が乏しいヨルダンでは、人的資源の開発が国の将来の鍵だと、教育を非常に重要視しているのです。その中で、英語教育の重要性も認められ、「これからの英語の授業は全部英語で行うことにしよう」ということになったのです。それは、簡単なことではありません。説明も、なにもかもが英語なのですから。
それを聞いたある若い母親から、というか、顔を覆っていますので、多分若い母親から、「でも私たち親が話せない英語をどうやって子供に教えればいいのでしょう?」という心配の声があがりました。
そこで「あなたたちも英語がわかったらよいと思いますか?」と聞きますと「もちろんです」と答えるのです。ですから、「もしも、私が定期的にやって来て、皆さんに英語を教えるのは、どうでしょう。子供の使う教科書を使って、常に子供のクラスより三章先を教えますから、家庭で子どもの英語の勉強を見てやるときに、子供の質問に答えることが出来るし、面目も保てる。どうでしょう」。……すると、具体案を提案すると、満場一致で賛成してくれました。
私にとって、何が嬉しいことだったかというと、子どもが英語を学ぶということはもちろんですが、大人に英語を教えることは、通常困難なことなのです。子供向けの教科書や本では不適切なので、やさしい、しかし大人向きの適切な教科書を見つけるのが大変なのです。
しかし、子どもの英語の勉強のため、という大前提があるので、母親たちが子供の教科書を使うことに抵抗を持たなかったのです。
- 佐々木
それは、本当にいいアイディアです。
- ニール
そうでしょう? 新しい教科書を探さないで既存の教科書を使えて、それに、彼女たちも、その教科書の体裁や子供向けの内容に屈辱を感じるなどということはなく、面目を失わないで、勉強し、英語力もぐんぐん向上していったのです! これが、始まったばかりのプログラムです。
- 佐々木
ダーシーから英語を教えてもらえるなんて、なんて贅沢なのでしょう!
- ニール
女性の識字率を上げるというテーマも、私のビジョンの一つなのです。
- 佐々木
ニュースステーションのレポーターをしていたとき、バングラデシュの女性の識字学校を訪問したことがあります。教えていたのはベンガル語だったと思いますが、彼女達は、文字を学ぶことで、計画性を身に付けることができるようになったと聞き、驚いたことを思い出します。言葉と無関係に思えるのですが、文字を覚えることで、時間の概念が理解できるようになり、計画を立てられるようになるのだそうです。
それまでは、村では、収穫した米などを、趣くままに食べていたけれど、文字を学び、時間の概念を理解すると、村の中心部に倉庫をつくり、穀物を蓄え、計画的に食べるようになったのだと。
- ニール
識字率というのは、本当に大きなテーマです。それも特に女性たちにとって。開発途上国では、若い女の子に文字を教えることがとても大切です。文字が読めるようになった女の子達は、自分で学習を続けることができます。母親になると子供に文字を教えられるようになるからです。だから、引退したら、個人のビジョンとしては、女性の識字率アップに貢献したい。そう思っているのです。
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