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Darcy Neillさん
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二人の間だけで通じる合図を決めておきました
- 佐々木
たとえば、可能なら、どんな風にコンサルティングをされているのか、話していただくことはできますか。
- ニール
守秘義務がありますから、名前は出しませんが、一つの事例をお話しましょう。大きな国際組織のリーダー的立場にあったノーベル賞受賞者のコーチングを引き受けたことがあります。
科学の分野では、当然ですが、頭脳明晰の人でした。でも、組織としてみると、なかなか部下との折り合いが上手くいかないという課題がありました。一番の問題は、「とても優秀な人だから、この人の話しを聞かなければ」という態度を、部下全員がとったために、彼の前で自分の意見をいう部下がいなかったのです。
スタッフ会議は、というのも名ばかりで、このリーダーの「お話」をうかがうだけの場になってしまっていました。当然、彼の話は面白く、聞くだけでも満足がいくのですが、組織の会議としての機能は、全く果たしていなかったのです。
そこで私はまず、このスタッフ会議を後ろでそっと観察させてもらいました。この、ノーベル賞受賞者だけが、講議のように一方的に話し続け、他の参加者はみな、テストに備える学生のように、一言も聞き漏らさないようにと、真剣に黙って聞いていました。
その部屋の一番後ろで、私だけが、脚を組んで、メモをとるような格好で聞いていたのです。実は、コーチングを引き受けた時に、二人の間だけで通じる合図をいくつか決めておきました。そのなかには、「話しを止める」という合図もはいっていました。私が、手に持っているペンを口にくわえたら、それは、「一方的な話しを止めて、スタッフの意見も聞いて下さい」という合図、ということだったのです。誰も気づきませんよね。わたしが、壇上まで歩いていって、「博士、話が長すぎます」なんていわなくてすむわけです。
優れた科学者で大学教授でもあった人ですから、生徒に講議をするのは大好きでした。でも、私がペンをくわえると、彼は話しながらそれを見て気づき、「……と思うけれど、君たちはどう思うかね」と、聞いている部下たちに意見を求めるようになったのです。
- 佐々木
すごく面白いです。そうやって自分を改善していこうと考えて、自分を高めるというリーダもすばらしいですね。
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