Michael Mooreの『アホでマヌケなアメリカ白人』(“Stupid White Men”)(2003年4月17日)
出張勝也(でばり・かつや)
株式会社オデッセイ コミュニケーションズ代表取締役社長
ヒラの社員の年収は1万5,500ドル(約186万円)、社長の年収は15万4000ドル(約1,848万円)、月額の「危険手当」は社員全員が一律で150ドル(約1万8,000円)。いったいどこの会社のことだと思いますか? 今、イラクで命をかけて戦っているアメリカ軍兵士たちの俸給です。社長にあたるのは、フランクス中央軍司令官です(米国人材サービス会社、Challenger, Gray and Christmasの調査による)。
日本でも、この前の戦争(60年ほど前、日本はアメリカと戦って、こてんぱんにやられたことをみなさん覚えていますか!?)では、赤紙一枚で多くの若者が戦場に引っ張っていかれました。現在のアメリカ軍人は、自発的な職業軍人ですが、それにしても、世界で最も豊かな国の兵士の、最初の年収が200万円にも届かないなんて、いったい、どうなっているのでしょうか!?(日本の自衛隊員の年収はいくらでしょう?)
ところで、3月23日に発表された「アカデミー賞」のドキュメンタリー部門において、マイケル・ムーア(Michael Moore)の『ボウリング・フォー・コロンバイン』(Bowling For Columbine)がオスカーを受賞しました。僕は、残念ながらテレビで観ることができなかったのですが、授賞式において、マイケル・ムーアは、痛烈なブッシュ批判を行い、大変な反響を呼んだと聞いています(発言内容は以下の通り:I’ve invited my fellow documentary nominees on the stage with us. They are here in solidarity with me because we like nonfiction. We like nonfiction and we live in fictitious times. We live in the time when we have fictitious election results that elect a fictitious president. We live in a time where we have a man sending us to war for fictitious reasons, whether it is the fiction of duct tape or the fiction of orange alerts. We are against this war, Mr. Bush. Shame on you, Mr. Bush. Shame on you! And any time that you have the Pope and the Dixie Chicks against you, your time is up.)。
そこで、マイケル・ムーアが書いた『アホでマヌケなアメリカ白人』(柏書房 ISBN:476012277X 本体価格:1,600円)を読みました。この本はアメリカやヨーロッパでは、ベストセラーになっているようです。日本でも、2002年10月15日に第1刷が出て、2003年3月7日には第19刷まで来ていますので、かなりの人たちが読んでいるに違いありません。
この本の中においても、作者は痛烈なブッシュ批判を展開しています。マイケル・ムーアは、2000年11月の大統領選挙で、フロリダ州における集票作業は不正に行われたものであり、本当の大統領はアル・ゴアであるということを何度も繰り返し言っています。彼のホームページなどでも、ブッシュあてのメッセージは、President Bush(ブッシュ大統領)とせず、Governor Bush(ブッシュ州知事)としています(ブッシュはテキサス州の知事であった)。
世界で最も豊かで強大な国・アメリカの矛盾に対して、マイケル・ムーアは、容赦なく攻撃を加えていきます。今回の第2次湾岸戦争に関して、やりきれないものを感じている人たちには、彼のホームページをのぞいて見ることをお勧めします。