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東京高裁は「証言拒否」を認めた ところが3月17日、東京高等裁判所は、東京地裁とはまったく異なった判断を示しました。
今度は、NHKの記者の証言拒否についてです。これも、読売新聞の記者の場合と同じく、アメリカの健康食品会社が訴えた裁判で、読売と同じような報道をしたNHKの記者が証言を求められました。
NHKの記者は、その後の異動で新潟放送局に勤務していたため、こちらは新潟地方裁判所が嘱託尋問を行いました。
この尋問で、NHKの記者も取材源について証言を拒否。これについて、去年10月、新潟地裁は、証言拒否を認めたため、会社は東京高等裁判所に訴えていました。これについての判断が、3月17日に出されたのです。
東京高裁は、記者の証言拒否を認めました。その論理は、次のようなものです。
民主主義社会には、国民の「知る権利」が欠かせない。報道機関の取材活動は、国民の「知る権利」に奉仕するものだ。
取材源の秘密が守られなければ報道機関と取材源の信頼関係が失われ、報道機関のその後の取材活動が不可能か困難になる。
だから、報道機関の取材源は、「職業の秘密」に当たる。
アメリカの会社は、「記者が証言拒否をして取材源を守ろうとするのは、取材源になった者が守秘義務違反を犯したからだ。取材源を保護すれば違法行為を隠すことになる」と主張しました。
これに対して高裁は、「保護しようとする利益は、取材源の利益ではない。取材源の公表によって深刻な影響を被る報道機関の取材活動上の利益である。ひいては報道機関の持つ民主主義社会における価値・利益だ」と述べました。
そして、「報道機関が公務員に対して取材活動を行うことは、それが真に報道目的から出たもので、法秩序全体の精神に照らし相当なものである限りは、違法性を欠く」と指摘しました。むずかしい言い回しですが、要するに、「報道目的であり、社会全体のためになることであれば、たとえ公務員に対して守秘義務を破るように働きかけることでも法律違反にはならない」と言っているのです。
至極まっとうな判断と言えるでしょう。民主主義社会には、国民の「知る権利」が大切であり、「知る権利」に奉仕するためには報道機関の自由な取材活動・報道の自由が必要である、というのです。
報道機関は、この期待に応えられるのか
しかし、ここまで報道機関の存在を高く評価されると、こそばゆい思いをする関係者も多いのではないでしょうか。
「知る権利」の名の下の興味本位の報道、センセーショナルな報道、人権無視の報道……。こうした報道があふれかえっているからです。
言論の自由を守るために、記者の取材源の秘匿」の権利は大切だけれど、何のために、その権利が保障されているのか、これを機会に改めて考え直す必要があると思うのです。
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