<3ページ目からの続き>
……脳神経に異常なプリオンがたまっていなければ、いくら検査をしても発見できないのです。検査で発見できるくらいに異常プリオンがたまるのは、早くても生後20カ月以上たってから。つまり、20カ月未満の牛の検査は意味がないものでした。
この全頭検査は、「安全」を確保するというよりは、「すべてを検査しているから安心ですよ」という「安心」を確保するものだったのです。
アメリカからこの点を指摘された日本政府は、今年8月から、検査の対象を生後21カ月以上の牛に限定しました。
問題は米国産牛肉だ
海外でBSEが発生すると、日本政府は、その国からの牛肉の輸入を停止してきました。アメリカでも2003年12月にBSEの牛が発見され、日本は米国産牛肉の輸入をストップ。これにより、主力商品の牛丼を販売できなくなった吉野家をめぐる騒動は、記憶に新しいところでしょう。
しかし、アメリカにとって、日本は大量の牛肉を輸入してくれるお得意さん。その日本が輸入をストップしたことで、アメリカの畜産業者は頭を抱えました。ここで、アメリカお得意の「日本への圧力」が発揮されます。ブッシュ大統領は、「盟友コイズミ」に、輸入解禁を働きかけたのです。
こうして、専門家による検討委員会が開かれ、米国産牛肉の輸入が解禁される見通しになったのです。
アメリカの牛肉についても、生後20カ月以上で脳などの異常プリオンがたまりやすい「特定危険部位」を除去したものが輸入されることになりそうです。
ところが、ここで問題が2つあります。ひとつは、アメリカは広い農場で放し飼いにしている牛が一般的なので、どの牛が生後20カ月未満なのか、正確には判定できないことがあるという点です。「生後20カ月未満だから」といって検査せずに出荷された牛が、実は20カ月を超えていた……ということが、起こりうるのです。
もうひとつの問題は、「特定危険部位」の除去の問題です。アメリカの場合、肉にするときの処理がしっかり行われているとは言えないのではないか、という指摘があることです。この部位が紛れ込んでいては、安心とは言えないというわけです。
以上の2点を、どうクリアするのか。日本の食品行政が、日本の消費者を向いているのか、アメリカの畜産業界を向いているのか、その姿勢が問われているのです。
|