ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第89回 財津 和夫さん

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財津 和夫さん
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いつも新鮮な感じがする言葉を選びたいから
- 佐々木
すみません(笑)。でも、一杯いろいろな歌詞、ストーリーを作られるじゃないですか。例えば、あるミュージシャンは、ファミリーレストランにずーっと座って、ご飯食べながら、帽子かなんかかぶって、下を向いて、周りの人の、一日、会話を聞いて、そこから今の旬な話題とかみんなの言葉遣いとかを拾って作詞してるとか……。
- 財津
それってユーミンじゃない? 昔なんか、そんなこと言ってたよね。
- 佐々木
あるいは、流行っている本とかマンガとかを読んで、なんかその、話題を拾うとか。そういうのって、いろいろなミュージシャンがいろんなシーンでお話されているのを、私も見聞きしますけれども、財津さんは、ストーリーのテーマとか、言葉の蓄積をどんな風にされているのかなあって。
- 財津
それは、ポップスを作るにあたって、とても大事なことだと思うんですよね。でも、チューリップもそうだったけれど、やっぱり僕自身、時代の先端で、トレンディーなものと向き合って、そこからコミュニケーションしていこうというような人材じゃないんですよ。恐らく。
よく言えば、空気みたいなもので、いつもなければ困るじゃない。平安の時代から。平安の時代よりももっと前からあったけれど、原始の時代から今まで、空気がなけりゃ生きていけないし。良く言えば、きっとそういう存在であったからこそ、長くお付き合いしてくれているのかな、と。客席とね。それが、トレンディーなものだけだと、その時代で終わっちゃうじゃないですか。
その時代特有の言葉を使うと、数十年後にそれを歌うときは、懐メロでしかないんですよ。懐メロを楽しむというそういう状況でいいんだったらそれでいいんだけれど、ここでも新鮮であるためには、本当に新鮮じゃないんだけれど、空気だから、今も新鮮な感じがしちゃう、っていうのかな。
- 佐々木
それは例えば、「魔法の黄色い靴」だとすると、その時代にできたいろいろな背景や粗削りな音楽ではあったけれど、今聞いても新鮮だし、多分今もう一回歌ってもヒットする可能性があると思うんですよね。今の時代にも聞ける曲。それは、普遍的な詩だかなんですね。だけれども、もしそれが、時代のトレンド、流行のものを歌詞に取り入れてしまっては、次の時代には歌いにくいということですよね。
- 財津
歌いにくいですよね、やっぱり。ぼくもね、一時期、ヒット狙え、ヒット狙え、ヒット狙え、っていうことで、流行りの言葉を目指して使ったことがあったけれど、なんかこう、やっぱり、自分たちには似合わないな、と。
土の中にいて、季節になると芽を出してくるような、そういうアーティストじゃないかな、って(笑)。
16/21
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