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金平 敬之助さん
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「蛍の光」が悪いんですよ
- 佐々木
いま、そうすると、学校が乱れてきているっていうのは、一つは先生の忙しさがあるというお考えですね。友だちをいじめて、自殺まで追い詰めてしまう、という報道も多くて気になるのですが。
- 金平
それは、「蛍の光」が悪いんですよ。
- 佐々木
「蛍の光」が悪い(笑)? どういうことですか?
- 金平
いきなり変な答え方をして申し訳ないですが、佐々木さんは野球、ご覧になります?
- 佐々木
時々。はい。
- 金平
阪神戦なんて見たことございます?
- 佐々木
たまに、ですが。
- 金平
お気づきになっていませんか? たとえば、相手の若いピッチャーが好投していたけれどついに7回に力尽きる。マウンドから肩を落として降りるわけです。このとき、その背中に、阪神ファンは「蛍の光」を浴びせるのですよ。残酷です。ひどいでしょ? 降板することは戦いが終わったということ。それまで、好投していたら「敵ながらあっぱれ」と褒めてやってもいいではないですか。それを「蛍の光」を浴びせる。ボクシングなら、KOされて倒れている相手にもう一度足げしているようなものです。「蛍の光」は、私は一種の陰湿ないじめではないかとさえ思っているのです。子どもがこのシーンをみて無意識のうちにも「弱いものいじめ」を肯定してしまうのではないですか。
皆、このシーンに案外気がついていない人が多いのです。で、あるとき「拝啓NHK殿」とNHKの野球解説者に訴えたことがあります。「別に『やめなさい』と言わなくていいから、トランペットを吹いている人の顔を大写しに映してもらってください。おそらく2度と吹かないようになると思いますので……」もちろん反響はまったくありませんでした。
それから、「アホ」って言っているんだと思うのですけどね、打者が凡退をすると、皆で「アホ」ってからかうんです。中日ファンもやっていましたけれど。阪神ファンもやる。ああいうことが、結果的には子どもの世界にいじめの風潮を助長しているのではないですか。
テレビの影響は想像以上に子どもの生き方に影響を与えている。私たちはそのことをもっと怖れなくてはいけないと思うのですが……。心あるほんとうの阪神ファンも「蛍の光」や「アホ」を嫌っているのではないでしょうか。
- 佐々木
限度がわからなかったり、言葉の強さや、やっていることの影響が、子どもは周りを見て「このぐらい、皆やっているから」ってなってしまっている。実はそれが、すごく深い、強い意味だったりするのに。
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