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モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長
西岡 郁夫さん
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「売れる」には理由がある
- 佐々木
アンディ・グローブさんから直々にインテルの副社長、そして社長へという道を示されたお話を伺うと、 大変魅力的なポジションだと思う一方、それ以前の研究所の所長や事業部長のご経験からは、更なる大きなステップだと感じますが。
- 西岡
事業部とは、まさにお金を儲けるためのセクションで、事業部長の役割は企画、開発、製造、販売の責任を持つということですから、一つの会社の社長みたいなもんですね。事業部長は5年半やり、そういう意味では一応、社長としてなすべきことはわかっていましたが。僕がインテルに行くときに一番考えたのは、「インテルにおける自分の市場バリューとは何だろう」ということです。インテルは半導体メーカーですが、工学博士号をコンピュータ・サイエンスで取ったことで分かるように、僕は半導体のプロではないのです。
それから、インテルはマイクロプロセッサを日本のパソコン・メーカーにより多く売るのが仕事です。
ところが僕は「買ってください、買ってください」というのが苦手です。
- 佐々木
そうかな(笑)。お上手だと思うけれど。
- 西岡
僕の場合、「こうこう、こういう理由で買うべきですよ。買ったほうがいいですよ」と説得をしてしまう。
- 佐々木
西岡さんに言われたら、買わずには、いられないでしょう(笑)。
- 西岡
営業タッチで、「すいません、値段まけますから買ってください」って言えないから。そういう弱さがあるんです。だから、「なんでインテルが僕を呼ぶんだ?」ということについては、すんなり納得できず、アンディと話しましたね。
その時に、「僕の使命はパソコンを普及させることなんだ。それならできる」と了解しました。当時、アップル以外のパソコンには全部インテル製が使われていた。いわゆる市場占有率は90%です。また、日本のパソコンの市場規模が130万台(インテルのMPUは約120万個)ぐらいだったのに対して、ワープロが250万台ぐらいだったのですが、ワープロにはインテルのマイクロプロセッサは全然使われていなかった。その数字を逆転させないと、インテルのマイクロプロセッサは売れないわけですよね。
それなら、パソコンがワープロを凌駕(りょうが)してどんどん売れればその90%には自動的にインテルのマイクロプロセッサが使われる。ワープロの半分をパソコンに変えるとパソコンの市場が250万台でインテルのMPUは230万個売れるという勘定です。売上倍増です。
一方、市場が130万台のままだといくらパソコンメーカーにお願いしても結局みんなが120万台を分け合うだけだからパイは大きくならないのです。このためには、NECや富士通や東芝にお願いして回るより、企業や個人にもっとパソコンを使ってもらえるようパソコンの普及活動を自分の仕事にしたらいい。「これなら得意だ」。アンディも納得しました。
だからインテルに入社してもパソコンメーカーに「買ってください」という営業は副社長に任せて、僕は一切しなかった。僕のバリューではないのだから。
- 佐々木
「パソコンを普及させればいいんだ」と悟られて、それで伝導師になられたのですか(笑)。
- 西岡
そう。
- 佐々木
それはアンディ・グローブさんと話し合われたことですね。アンディ・グローブさんてどんな人ですか?
- 西岡
彼は、まず、本当に真面目な人、ウソのない人です。そして、ものすごい熱情家ですね。一生懸命議論するし、理解もしてくれる。それから、厳しい人ですね。人に厳しいというより、論理に対して厳しい人です。筋の通らないことは理解できない。それから、社交辞令とかそういうことが嫌いな人ですね。
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