ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第57回 茂木 健一郎さん

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脳科学者 ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー
茂木 健一郎さん
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どうやって脳が心を生み出しているのか
- 佐々木
そういったことを、具体的にはどんなふうに研究しているんですか?
- 茂木
今やっているのは、対応関係を見るということなんですね。脳の活動とクオリアの対応関係を見るということで、脳がこう活動するとこういうクオリアを感じられるというような、対応関係を一生懸命、今作り上げています。
もうひとつはダイナミクスというか、どういう動きが生じて、脳の中にどういう働きが生じて、その結果クオリアが生まれるかっていう、過程を見るということを、主にやっています。
- 佐々木
具体的には、脳の中の働きってどのように見るのですか? 何かを考えたり感じさせたりするときに脳にコードをたくさんつけて見る、みたいな方法?
- 茂木
そうですね。脳の中の血液の流れの変化を見る装置があるんですけれど、磁場をかけて、そのときに出てくるシグナルを見ます。いろいろな刺激を見せたときに、どういうシグナルが返ってくるかで、脳の中の血液の流れの変化が分かるんですね。血液の流れが変わるっていうことは、神経細胞の活動が変化しているっていうことなんです。
- 佐々木
血液がきちんと流れていることが脳が活動している状態ということなんですね。
- 茂木
たくさん活動したところほど、栄養素などが必要なので、たくさん血液が流れます。その対応関係を見てここが活動している、ということが分かる。
そうすると、そのときの意識の中で感じられているクオリアの内容と比べて、徐々に対応関係のマッピングができてくるわけですね。その対応関係のマッピングを通して、どうやって脳が心を生み出しているのかっていうことを理解しようというのが、ひとつの有力な方法なんです。
でも、そのときに問題になるのは、じゃあ私っていうのはどうやって成り立っているのか、っていうことなんですね。それは、かなり難しい問題がいろいろあるんだけれど、単に測定するだけではなくて、いろいろ理論的な考察というか、モデルを作ったりということが、どうしても必要になっちゃうわけですね。そこが一番面白いわけです。
- 佐々木
面白そうです。モデルを作るというのは、仮にこうではないかという想定をして?
- 茂木
想定をして、それがたとえば実験結果と合うか、とかですね。分かりやすい例で言うと、「見える」っていうことってすごく不思議でね。脳の中で後頭葉がだいたい、見えるっていうことを支えている場所なんですけれど、ここが活動しただけでは見えるっていうことにはならなくて、前頭葉での、「私が何かを見ている」っていう仕組みと結びつかなくてはいけないんですね。
そのマッチングの過程が、われわれが研究していることのひとつなんですけれど、要するに、「私が何かを見る」っていう、「何かを」っていうのと、「私が」っていう働きが脳の中にあって、それが出会うダイナミクスなんですよ。
- 佐々木
面白い! でもますます「私」がわからなくなってきました。そうすると、「私」は、前頭葉の中にあるのでしょうか……。
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