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米倉 誠一郎さん
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失敗を共有すると、強い
米倉
ベンチャーにとって、銀行融資って最悪ですよね。失敗したら返さなくちゃいけないから。ベンチャーキャピタルはうるさいことも言うけれど、投資だから、会社がつぶれたら「おまえ、担保出せ」とは言わないんですよ。時々、日本の会社でそれを言うのがいるから困るんですけど(笑)。
だいたいキャピタルは大事なんです。1979年ぐらいから、アメリカでエリーザ法(Employee Retirement Income Security Act)っていうのが改正されました。従業員が退職した後のインカムを安定化させるための法律。ペンション・ファンド(年金)とかは、流動資産とか、ベンチャーとか不動産に投資できなかった。国債かブルー・チップしか買えなかったのを79年ぐらいから改めたんですよね。その一部はベンチャーキャピタルが使っていいよと。これはすごく大きかった。
僕らが試算した時に、日本でも国家公務員と地方公務員の年金積み残し残高が48兆円くらいあった。このうちの、5%だけはベンチャーに投資してもいいですよ、というとマーケットに一挙に2兆4000億円の資金がポンとできるんですね。
そういうポートフォリオを入れ始めた。そうすると一方でエントリーリスクの低いお金が集まるようになる。ナスダックも日本市場のように流通量が少ないんじゃなくて、非常に簡便だけど公開性が高くて、透明性も高くて、資金流通量の多いナスダックを、アメリカはやっぱり20年ぐらいかけて育ててきたんですね。それが90年代に花開いてチャレンジが起こるようになった。
佐々木
チャレンジには、大きなリターンが見えていることが大切、ということですね。
米倉
そう。そのプロセスでチャレンジが起こると、みんな挑戦するのは当たり前。宝くじって当たらない人が多いじゃないですか。これ、当たり前ですよね。シリコンバレーも当たらないほうが多いんですよ。
でもそれぞれの人の経験をみんなが共有しているから、「あいつは意味のない失敗をした」「あいつは良い失敗」というふうに、みんな意味のある失敗をした人たちにプラス評価がついていくわけです。そして次のプロジェクトの時には声が掛かるという、そういうサーキュレーションができている。
だから、この種の失敗を共有する、っていうのは口で言うのは簡単なんですが、本当に大切なんですよ。
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