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松井龍哉さん
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MoMA。自分の名前を言ったら“Welcome”って
- 松井
僕は感激屋で、いろんなことに感動するんですが(笑)。でも本当に自分自身が感動できる瞬間っていうものは、人生にそうないと思います。3回くらいじゃないかと思うんですよね。たとえば、テレビでサッカーが勝ったとかは、言ってしまえば他人事じゃないですか(笑)。
誰かが優勝してうれしいとかはどうでもいいですよね。やっぱり自分の人生とやってきたことがオーバーラップしたときに感動するのかなと思います。
そういう意味でいえば、デザイナーになろうと思った中学生の時には、どうせやるなら世界で勝負したいというところがあって、ニューヨークの近代美術館(MoMA)で展覧会をやるアーティストになりたいなと思っていました。
高校の美術学科に進むときも先生に、「僕は将来MoMAに行くアーティストを目指しているんで就職とか、小さいこと言うな」と(笑)。
- 佐々木
けっこう柔らかい物腰で厳しい言葉が出る(笑)。でもビジョンが明確だったから、2001年2月、MoMAでの出展につながったのではないでしょうか?
- 松井
そうですね。でも16、7年かかってしまいましたけど。
- 佐々木
いえ、短いと思いますよ(笑)。普通、口で言っていても、なかなか実現しないものです。やりたいことが明確なんですよね。
- 松井
ええ。若いときにアルバイトでお金を貯めて何度かMoMAに遊びに行って、僕が今創っている作品だったらこの壁に掛けるなとか、どう飾ろうかなとか、いろいろイメージしてね。
- 佐々木
さすが目に焼き付けるってところから始めてる。出展されることをイメージしてMoMAに行くとか、一つ一つ映像化していく。行動力が必要ですね。
- 松井
初めて自分が創ったロボットがMoMAから展示してくださいって言われたとき、ニューヨークに行って、MoMAで自分の名前を言ったら“Welcome”って迎え入れてくれて。
「いつかはここで」と思っていたから、自分の作品を持って搬入しに行った時、エスカレーターを上っていくと、フィリップ・ジョンソンがデザインした有名な庭が見えて、非常に感動しましたね。自分の足が震えているのがわかるんです。
それからウォーホルの有名なマリリンのシルクスクリーンがあって。僕、中学生のころから部屋にその絵のポスターを貼っていました。僕は物事をいいように解釈するほうなので、「その本物が僕をMoMAに呼んでくれた」、そんな気さえしてました。
そのときは非常に感動して、こういうレベルが感動だと全身で感じたんですけど。そういう感動は、人生に2回か3回しかない、そんなもんじゃないかな、と思います。デザインするときも同じです。愛情をかけた分しか返ってこないです。それ以上は絶対期待しないし、しても意味がないです。
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