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伊勢崎賢治さん
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僕が任されたのは、当時、人口60万人ぐらいで、世界で一番大きなスラム
- 伊勢崎
で、僕が任されたのは、当時、人口60万人ぐらいで、世界で一番大きなスラムと言われていて。
- 佐々木
60万人のスラム!
- 伊勢崎
だから、一つの都市みたいです。
- 佐々木
想像がつきません。
- 伊勢崎
おっかなくて警察も入れないっていう場所。殺し合いもいつも行われていて、特にヒンドゥー教徒とイスラム教徒、いつも暴力沙汰を起こしているっていう、そういう所ですよね。
それでまず、過去の「つて」を通じて、その「つて」がヒンドゥー教徒のものだったら、まずヒンドゥーのコミュニティから入っていく。まず現地に拠点を設けることです。
- 佐々木
でも、たとえばヒンドゥーの人達のところに拠点を設けると、イスラムの人が、「何だ、あいつらは先にヒンドゥーのところに行きやがって」ってならないんですか?
- 伊勢崎
なりますよ。でもスラムって、そんなに簡単なものではなくて、ヒンドゥーの中にもいろいろなカーストがありますし、スラムの成り立ちっていうのは、基本的に農村から出ているんです。農村の連中が都市に来るでしょう。そうすると、先に出ていった人達を頼って、周りに住み始めるんです。そうするとコミュニティができるんですね。それが宗教でまとまる可能性もあるし、出身地でまとまる、あるいはカーストでまとまるとか、いろいろ。
- 佐々木
いろいろまとまりがあるんですね。でも、その分で、ちょっとずつまとめていって、最後に、また大きくまとめるみたいなことをするわけですね。それは失敗することもあるわけですか。
- 伊勢崎
失敗の連続です。別に、僕らがアジテートするわけじゃなくて、コミュニティ・オーガナイザーっていうのは、アジテートする人間を作る、リーダーを作っていくわけですよね。で、一番の失敗例は、リーダーが汚職をするっていうことです。住民組織だと会員を集めたり、会員費を集めたりするじゃないですか。で、オフィスもあるわけですが、そこで、汚職が。
もう一つは、やっぱり政治政党にせっかく育てたリーダーたちが取っていかれちゃうっていうことです。政治政党がほっときませんからね。もしそうなったら、僕らはその段階でそのリーダーたちと手を切る。引き留めないけど、きっぱりと手を切る。僕らは宗教間の対立をあおる政治政党から超越した存在でなければならないし、「宗教の違いを乗り越えて融和しよう」とかの啓蒙じみたことも一切口にしません。ただ黙々と「だれでも共通の日常生活の問題だけをイシューとして扱う」ということです。
- 佐々木
「家を与えるんだ」みたいな、具体的な課題でまとめる、というところにきちんと軸をおいているんですね。
- 伊勢崎
そうですね。まあ、居住権が一番最初ですね。
13/30
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