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鈴木 淳子さん
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最近の風潮はコンビニ化
- 佐々木
最近の傾向って、何かありますか。
- 鈴木
最近の風潮はコンビニ化というか。みんな我慢が足りなくなったっていうか、なんでも手に入って当たり前みたいな、そんな感じが強くなってきたっていうのはよく感じています。
例えば、「この家がこんなにひどい、叱る声、泣き声が耐えられない」って通報したら、すぐにやってきて注意してくれて、泣き声はなくなるはずだと思ったり、「税金を払っているんだから、子育て支援をやるべきでしょ。うちの子はこんななんだから、すぐに何とかしてよ」とか。
言えばすぐに、相手が、自分に都合のいいサービスを出してきて当たり前みたいな主張が最近は多いように感じます。必要があって親の同意なく子どもを保護するときも、「勝手につれていくなら、いい子にして返せ」とか。何か、機械のメンテナンスにでも出すような考え方だったり。
話は少しかわりますけど、「時代が変わって」と言いますが、「想定外」のことも出てきて、法律が追いつかなくて困っているという状況もありますよね。
先日嘱託の弁護士さんから聞いたのですが、出生届を出さずに未就籍になっている子どもたち、いますよね。離婚ができなくて前の夫の戸籍に入ってしまうから、というケースが多いということは認知されて、それへの対策は進んでいくのでしょう。問題は、出生届けを出すべき親はちゃんといるのに、さしたる理由もなく届けを怠っている場合、子どもは戸籍がないままで困っているんだけど、親を飛び越えて他の誰か、知事とか児童相談所長とかが、出生届を出すことができないんだそうです。
あと、離婚したとき、親権をどちらかに決めますよね、その後、家裁に申し立てれば、親権を変更したりもできるわけですが、親権をもった親が再婚して養子縁組した後に、実親のほうは先に死んでしまうというケースもある。たとえば、そういう養親が虐待しているとき、離婚して親権を持っていないもう片方の実親のほうは、親権を取りたいとおもうわけですが、養親の方が強くて、親権変更はできないんだそうです。そういう、少数ですが、確実に困っている子どもたちがいて、法律上なんともできないようなことって、どうやって変えていけばいいんでしょうか。
起こってしまった虐待については、児童相談所は、「子どもの人権を守る最後の砦」というのが、私たちの誇りなので、お話してきたように、慎重に、でもびっくりするほど素早く、かなり詳細な情報を集めて動きます。影で動いてネットワークを作り見守り続けることもあるし、安全確認が急務となれば、表に立って、警察と一緒に立ち入りすることもある。情報を集めていくと、初めの一報とはずいぶん違うこともある。虐待だからといって、何でもかんでもすぐに親子分離することが援助ではありません。
目的は、子どもが安心して家族と地域で生活できることです。見守りや、支えるネットワークがあるかどうか、そことつながることができるか、つながりつづけることができるかどうかがポイントなんです。
- 佐々木
よくわかりました。批判するのではなく、社会で子どもたちを支えるということの大切さ、再度認識しました。また、いろいろ教えてください。今日はお忙しい中ありがとうございました。
対談を終えて
「非日常が日常」と語る鈴木さんの言葉選びや表情から、今、児童相談所の職員の方々が見たり、感じたりしていることの重要性を感じる対談となりました。そして心から尊敬しました。プライバシーの問題が大きく、具体例を出せない。今後相談されたい方のことを考えると、言えないこともある。そんな葛藤の中、丁寧に答えてくださいました。私たちの社会が、どうなっているのか。家族の内側が、どうなっているのか。そして、子どもたちの将来がどうなっていくのか。これを機会に更に考え、子どもがいるいないにかかわらず、私たちができることを行動に変えていきたいと、切に思います。(佐々木かをり)
25/25
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