「すればいいってもんでもない」
藤田正美(ふじた・まさよし)
『ニューズウィーク日本版』編集主幹
2001年4月14日
前回、「新しい歴史教科書をつくる会」が編纂した教科書を話題にしました。読者からいろいろメールをいただきましたが、その中でも目を引いたのが次の意見です。「複数の物の見方や考え方が“共存”出来る教科書って、作れないんでしょうかねぇ?偏ることが悪いのではなく、偏っていることを自覚できないことこそが問題のような気がします」
僕はこの意見に全面的に賛成します。複数の物の見方がある中から、生徒たちが自分で考え、自分なりの答を出していく。それが教育の理想であると思います。もちろんこれでは「暗記主義」の試験は突破できないかもしれませんが……。
さて今週ですが、農産物3品目(ネギ、生シイタケ、畳表)について、初めてセーフガード(緊急輸入制限)が発動されます。中国からの輸入急増に対抗した措置ですが、流通業界や外食産業は、これらの品目の値段が上がると懸念を表明しています。たしかに国内生産者の人たちは大変だと思いますが、だからといって制限すればいいというものでもないでしょう。
かつて対米輸出で日本もさんざんアメリカから「緊急輸入制限」を課されました。しかしそれらの産業はアメリカ国内で復活したのでしょうか。もし競争力がないのなら遅かれ早かれ産業転換しなければならないのは明らかです。
これらの品目は消費者からみればそれほど大きな影響はないと思われますが、実はコメはずっと輸入制限をしている品目です。しかも国際価格の8倍もの高いコメを買わされているのです。安全性や品質から国内産のほうが安心という消費者がいるのも事実ですが、とにかく安いほうがいいという消費者もいるのですから、輸入を制限しなくてもいいじゃないか、と思うのは僕だけでしょうか。