わかってますか? 小泉さん(2003年3月8日)
今回の小泉首相の発言に対して、なんだか世間、主にマスコミの反応が鈍いような気がしていました。わたし自身はものすごく失望し、大変な発言であると思ったのですが、一般的にはそれほどたいしたことではないのかな、と不思議に思っていました。そんなこともあり、変な話ですが藤田さんのコラムを読んで、自分の感覚が過敏なわけではないのだと少し安心したのです。
わたしは小泉さんにそれほど期待をしていたわけではありません。どちらかというと、あまりにも小泉さんを持ち上げるマスコミに不安を抱いていたほうです。そんなわたしにさえ、あの発言は衝撃的でした。「公約が守れなくてもたいしたことではない」という発言も含めて。今の小泉さんは、まったく国民のほうを見ていないように思います。記者会見にしても、ただ言葉尻にだけ反応し、いら立ち、説明ができない小泉さん。これでは何もわかりません。
イラク情勢について言えば、アメリカを支持する日本政府が守ろうとしている「国益」が何なのか、わたしにはわかりません。「同盟国」であるということは、何も言わずにただ付いていくだけの国ということなのか。2001年9月11日のテロは、今のアメリカの姿勢が生んだものではなかったのか。日本がするべきことは、ほかにあるのではないか。疑問はたくさんありますが、日々の記者会見を見ていても納得はできません。どうして説明してくれないのか、もどかしく思います。国会中継を見ていても、何一つ理解できないのです。今は日本という国の国民であることが、つらく感じられます。せめて、今はフランス、ドイツ、ロシアが頑張ってくれることを祈ります。(ごままめ・未婚・28歳)
最近の小泉さんにはよく失望させられます。自民党をぶち壊す、規制緩和など、アドバルーンを掲げ、鳴り物入りで総理大臣に就任されましたが、結果をみれば、ほぼ全戦全敗です。何一つ公約を守れませんでした。消去法的に選べば、小泉さんは今までの首相の中では、かなり前向きな努力をしているとは思うのですが、それでもその批判に対しては、「公約を守れなかったことはたいして重要ではない」と開き直りました。言葉尻をとらえてどうこういうつもりはありませんが、やはり菅さんが言ったとおり、そんな小泉さんの公約は、今後誰も信用しなくなる、ということだと思います。
結局彼も、自分がクビになるのは惜しい、絶対に辞表は出したくない、というのが本音なのでしょう。しかし、本来なら、自分のことより、国のことを第一に考えるべきだと思います。
日本の悲劇は、国に対してのステークホルダーが、誰ひとり運営に当たっていない、失敗に対して、誰も責任を取らない、国の利害と政治家の利害が一致していない、ということではないでしょうか。日産が倒れそうになったとき、資本関係のあるルノーから、社長としてカルロス・ゴーンさんが移られてきて、公約を果たせなければ、潔くやめる、と宣言して有言実行を成し遂げました。彼のやったことは、誰でもできたことで、コスト削減だけじゃないか、という反論もありますが、ではなぜ日産が26年間もシェア低下という低迷に苦しんでいたのでしょうか。しがらみを絶ち、自分の利害と会社の利害のベクトルを同じくした決死の改革だったと思います。
それに引き換え、日本の政治家は、失敗しても、何かと理由をつけて居残りますが、自分の政治生命を賭けて国を再建しようという人がいません。それを望むこともできない日本国民は、本当に不幸だと思っています。なぜ政治家は、60歳でもまだ若いと言われるのでしょう。本来ならもう定年です。韓国の新政権では、閣僚の平均年齢が44歳ぐらいですよね。韓国は、日本のまねをやめたことで、不況から脱出した、と言われています。その若さ、スピード、トップの危機感について、今度は日本がまねをさせてもらうべきだと思います。
官僚制度は、戦後の立ち直りの時期には、効率的に資本が分配されて、最短で経済大国に成り得た、有効な制度だったのでしょうが、今はどうでしょうか。最適な制度だとはとても思えません。規制は緩和するよりも、撤廃するべきではないでしょうか。規制撤廃で、アメリカもイギリスも、過去、製造大国から知的大国に変貌を成し遂げてきました。日本の場合規制撤廃の前に立ちはだかっているのは、既得権益と自分の保身に走っている官僚ではないのでしょうか。
連日株が最安値を更新しています。政府からは、「今の市場は経済の実体を反映していない」と市場のせいにするか、金融機関の保有株式売却を遅らせる、日銀に株を買わせる、などどれも小手先の処方箋しか出てきません。もはや、国家的危機にあるにもかかわらず、今の日本は脳死状態です。それも、数年来日本の構造的問題に何ら手をつけることをせず、空売り規制、外資悪玉論で、株式市場から流動性を奪い、市場を規制しようとして抜本的対策をしてこなかったつけが回ってきているのです。
人間、やるべきことを先送りにすると、最悪のタイミングでやらなくてはいけなくなる、と思いませんか。さらに悲劇的なことは今の日本には、抜本的外科手術に耐え得る体力も、もはや残っていないかもしれません。それも、すべて先送りにしてきた功罪です。
小泉政権になってから、170兆円もの株の時価総額が消失しました。しかし、これが、規制緩和に伴う痛みだったらまだ許容できます。でも実体は、ハードランディングをちらつかせては、“stop and go”で企業倒産型から救済型への振り子のような動き、財政再建型から景気対策型への生半可な転換など、方針を変えてきたことへの小泉政権への失望、日本売り、の結果です。それでもなお、株の下落を、市場の行き過ぎ、として批判をかわしています。これだけの危機へのシグナルを市場が発しているにもかかわらず、いまだ危機感を持たない政府は、いつになったら、日本が火事だと気付くのでしょうか。
日本独特の神話がいくつも崩壊して、社会のシステム自体のほころびが、小手先の修正では修復不可能になってきました。財政政策も有効でなければ、(バブル後100兆円もの大金を投じて、残ったのはさらなる財政悪化のみです)金融政策、量的緩和も何ら効果をもたらさない。経済学の限界、に日本はあるのでしょうか。
日本の政治に未来は託せるのか。いつまでたっても途絶えることのない、政治と金の問題を見せつけられて、国民は本当に政治家に愛想を尽かしています。これからの日本で、子どもを産み育てることが、正しいのか、わたしには答えが見つかりません。
誰か、本気で日本の未来を考える人に、政権を任せたい、ただそれだけを望みます。(はるたいママ)