
会場いっぱいの働く女性が注目する3人目の講演者は、出井伸之さん。スタイリッシュな姿で登場です。山本寛斎さん、伊藤麻美さんの講演を朝から聴いていた出井さんは、登壇すると、まず、「毎年誘われていたのに、今までこの会議に来なかったことを反省しています」とコメント。国際女性ビジネス会議が生み出す熱気あふれる雰囲気を受け取って下さった様子です。ソニーを10年間率い、現在はクオンタムリープ株式会社の代表である出井さん。「個が創る新しい時代」をテーマに、これからの日本、企業、そして個人はどうあるべきなのか、グローバルな視点から語ってくださいました。

若い世代を助けたい
出井さんは現在、クオンタムリープを通して、ベンチャー企業や新ビジネスの創出をサポートする活動をしています。若いアーティストのライブにも出かけ、知り合う機会があるとすぐに「メル友になってしまう」のだとか。国内外の超有名アーティストとのエピソードで会場を沸かせます。「いつの時代も、若者は大丈夫か? と思われている。でも、僕は今の若い世代が駄目だとは思わない」と前向きな考えを述べながらも、「ただ、昔のやり方では駄目。ページをめくるということが大切」と、新たな意識転換の必要性を訴えます。

アジアの成長と日本の責任
話題は、“アジアの中の日本”へうつります。めざましい経済発展が注目される中国やインド、その中で、成熟期にある日本ができること、やるべきことを提案。日本にはアジアでとるべき責任があり、世界からそれを期待されているはずだ、と。「中国、インドは経済も伸びているが貧困など、様々な問題も抱えている。その点、日本はもっと助けられるのではないか」「日本ではエンターテインメント産業が育っており、そこでもアジアに貢献できる」。
また、企業に対しても、マーケットをアジアに広げたり、アジアと日本の力をかけ算して考えること、もともとニッチな分野が得意な日本の企業なのだから、その方面で進めばよいのではないか? など、様々なアイディアを披露。会場の皆、真剣な眼差しでメモをとります。

未来を再定義する
では、これからの日本はどうあるべきなのか? 出井さんは日本の競争力が不安だと言います。金融をひっぱってきたアメリカが沈み、アメリカの庇護のもとから離れ、自分の国をどうもっていくのか。それを自分で考えねばならない岐路に日本は立たされている、と指摘。変わらねばならない要素として、大量生産時代に定められた教育制度、行政にも言及しました。また、日本がどう変化していくのか、指針を定めるためには、会社・個人が「本当に何がやりたいのか」を常に考えることが重要だと力説。「今までの延長線上に答えはない。ビジョンをもって自分の未来を再定義することが必要」と繰り返し強く訴えました。そして、「日本の現状は皆下を向いてしまっている状況だが、必ず脱することができる。未来は明るい」と力強く断言。大きな拍手の中で講演をしめくくりました。
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