インターネット時代の英語習得(2003年3月20日)
出張勝也(でばり・かつや)
株式会社オデッセイ コミュニケーションズ代表取締役社長
前回のこのコーナーで書きましたが、僕は四国の田舎町で育ちました。1970年代には、インターネットはもちろんありませんし、国際電話をすることさえも、一般庶民には気楽にできるものではありませんでした。高校2年生だった76年から77年にかけて、僕はアイオワ州のHampton Community High Schoolに通いました。その間、何度かホームシックになり、一度だけ日本の親にコレクトコールで電話をして大騒ぎをした記憶があります。今であれば、インターネット電話などもあり、10年、20年前とは比較にならない安さで、海外に電話をすることができるようになりました。ヨーロッパにいるいとこたちの子どもも、頻繁に日本にいる親に電話をし、日本にもしばしば帰ってきているようです。「海外留学」が非常に日常的なものになってきているのでしょう。
この背景には、80年代に始まったいくつかの「大変革」があります。まず、日本の「円」の力が強くなったこと。85年のプラザ合意以降の円高が、海外旅行の値段を変えてしまいました。デフレ時代の到来前から、20年間にわたって、航空料金はずっと下がってきました。10年ほど前には、日本人の海外旅行は、年間1,000万人の大台を超えています。
それから、通信技術の発展があります。多くの人にとって、海外に電話することと、隣の町にいる友だちに電話することは、まったく変わりのないことになっているのではないでしょうか。インターネット時代に入り、時間と空間の距離はまったくなくなってしまいました。大手の旅行代理店が、子どもの海外での修学旅行風景を、インターネットを使って日本の親御さんにライブで見せる、なんてことも普通になっています。
非常に安いコストで英語に接する機会が増え、英語でのコミュニケーション力を高めるには、比較にならないほど便利な状況ができあがっているのですが、それと比例して、日本語でもやっていける空間や時間も拡がりました。しかし、反比例するように、日本人のハングリー精神と知的好奇心は減少。結果として、日本人の英語を使ったコミュニケーション力の平均レベルは、もしかして下がっているのではないかと感じることもあります。
先週は、ewomanサーベイのキャスターとして、4日間にわたってみなさんの英字新聞の活用方法を拝見しましたが、海外の主要新聞のメールマガジンを読んでいる方がかなりいらっしゃいました。ewomanに参加されている方のように、やる気のある人たちには、インターネット時代は、すばらしい英語学習環境を提供してくれます。
一方、海外に出ても、日本語の環境の中に自分を置いて、まったく英語の環境に入っていこうとしない人もいれば、日本国内にいて、どんどん英語の環境を作っている人もいます。最近、海外留学をしたこともないのに、英語の検定試験で満点の990点をとった人を数人面接しましたが、これとは逆に、3年も4年も英語圏に住んでいたにもかかわらず、情けないほどの英語力の人もたくさん知っています。
インターネット時代、英語習得にとって本当に大切なことは、動機付けとその強さだけであって、さまつな方法論ではないということが、ますます明白になってきています。