ノーベル賞受賞者の英語(2002年8月24日)
出張勝也(でばり・かつや)
株式会社オデッセイ コミュニケーションズ代表取締役社長
相変わらず暗い話が多い日本で、ノーベル賞受賞者が2名出たことはたいへん勇気を与えてくれるニュースです。特に、島津製作所のサラリーマン研究者・田中耕一さんの受賞には、心から拍手を送りたいと思います。金や名誉のためではなく、好奇心や探求心から、自分の信じる研究を続けてきたという姿勢がいいですね。前回、英語を勉強することに関しても、他人に示すためでなく、自分の心からわき上がってくる欲求に基づいて勉強することが大切だと書きました。別にノーベル賞なんてまったく関係ないわれわれ凡人も、好奇心や向学心から勉強を続けていくことが必要なのではないでしょうか。
さて、ノーベル賞受賞者の英語力ってどのくらいなのか、皆さん興味ありませんか? 田中さんは受賞の知らせの電話を受けたときに、どうもノーベル賞受賞の知らせのようだったが、最初は信じられなかったというようなことを記者会見で言っていました。もしその通りだとすると、話したり、聞いたりするのはあまりお上手ではないのかも? ただ、田中さんの研究成果は、まずアメリカで認められたそうですから、論文は英語で発表されたのでしょう。田中さんの読み書きの英語力はどのくらいなのかなどと、僕はちょっと興味を感じてしまいました。
以前、若くしてノーベル賞を受賞した先生の英語でのお話をお聴きしたことがあります。長くアメリカで研究をされた方ですが、英語のスピーチはお世辞にも流暢とは言えたものではありませんでした。でも中身があるから別にアクセントやイントネーションがおかしくても、僕も含めて聞く人たちは真剣そのものでした。
英語の教材には、ネイティブ、帰国子女、あるいは「英語屋」の英語が使われていますが、むしろ、必ずしも流暢ではないけれど国際的に活躍されている人たちの英語を聞く機会がもっとあったらいいなと思います。どちらかといえばブロークンと言われるかもしれない英語を使いながら、国際的に認められる仕事をしている人たちがいることを知ることによって、本当に必要なコミュニケーション力って何なのかを考えてみてはどうでしょうか? ペラペラと英語は出てくるけれど、中身が本当にあるのかなと思えるような人たちに対するコンプレックスも、すこしは軽くなるかもしれません。
田中さんがスウェーデン王立アカデミーで行う講演が楽しみです。