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……30兆円から35兆円程度にまで増やしているのです。
各銀行にしてみれば、当座預金がいくら増えても金利がつきませんから、少しでも企業に貸し出せば、金利収入になると考え、貸し出しを増やすはずです。銀行が貸し出しに積極的になれば、景気回復にもプラスになるだろう……というのが、量的緩和の趣旨なのです。
これで、本当のところ、どこまで景気回復に効果があったのかはわかりません。日銀にある当座預金を貯水槽にたとえ、日銀から各銀行への資金ルートをホースにたとえると、日銀の貯水槽の水が大量にたまって水圧が高まるから、水がホースを通って銀行に行き、そこから世の中に出て行くだろう……という、願望でしかないのです。
その通りに資金が世の中に出回り、どれだけ景気回復につながったのかは、まったく不明です。ほとんどそのまま積み上がっていたのではないかとみられています。
このように、無駄に積み上がっている当座預金のことを、業界では「ブタ積み」といいます。「ブタ」というのは花札用語。価値がないことをいいます。せっかくの資金が、使い道なく無駄に積み上がっているという意味で、こんな呼び方をするのです。
ただ、「各銀行の当座預金口座には大量の資金がある」ということをみんなが知っていれば、個別の銀行に対する信用不安は解消します。金融不安の払拭には役に立ったのです。そのことが、結果的に金融システムに対する安心感につながり、景気の最悪期からの脱出に効果があったことは確かでしょう。
本当は、解除しても大丈夫なのだが
こう考えると、日銀が量的緩和を解除したところで、実際には何の影響もないはずです。日銀は、「量的緩和を解除しても金利をゼロにしておく方針に変わりはない」と言っていますし。
しかし、「日銀が量的緩和を解除した」ということになると、「日銀は金融引き締めに方針を転換したのか」と受け取られる可能性があります。「金融が引き締められると、これまでのような景気回復の速度に赤信号がつくかも知れない」というムードが広がり、結果として景気回復にブレーキがかかることを、小泉内閣は心配しているのです。
いま全国を見渡すと、東京の都心では、地価が上昇し、高額のブランド品が飛ぶように売れ、億ションと呼ばれるマンションも売り出せば即日完売。金曜日の夜には都心の繁華街でタクシーがつかまりにくくなるなど、“ミニバブル”の様相を呈しています。
日銀の政策決定者は、みんな東京在住ですから、この様子を見ると、「バブルがとりかえしのつかない状態になる前に、少しずつ手綱を締めねば」という気にもなります。
その一方で、……
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