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……そうではないのですね。石油は石の中に油の粒のような形で存在しているのです。だから、「石油」なのです。
この石油を地下から取り出したものが原油です。原油が精製されて、灯油やガソリンなどの各種の石油製品に分離される、というわけです。
原油は、「バレル」という単位で量が計られます。バレルとは英語で「樽」のこと。むかしは石油を樽に入れて運んでいたので、石油の量の単位として使われるようになりました。
1バレルは約159リットルです。本当は樽には159リットル以上入るのですが、かつて石油を樽に入れて運んでいるうちに石油がこぼれてしまい、残っていた石油の量が159リットルだったと言われています。
アメリカ原油は「テキサス産」だ
世界の原油は、主に北米、中東、北海(欧州)の3カ所で産出されます。それぞれに取引される市場があります。
このうち北米産油を取引するニューヨークの「マーカンタイル取引所」で最も活発な取引が行われているため、ここで決まった価格が、中東や北海産の原油価格にも大きな影響を与えているのです。
ここで取引されている重油とは、厳密に言えば「先物」。つまり、実物の重油ではなく、「実物を買うことのできる権利」を売買しているのです。
北米産の代表的な原油は「WTI」(West Texas Intermediate)と言います。「西テキサスの中質油」という意味ですね。アメリカのテキサス州を中心とした中西部でとれる中質油です。ガソリンが大量に含まれている石油なので、ガソリンを大量に消費するアメリカ人にとってはぴったりの種類です。
テキサスといえば、そう、ブッシュ大統領の地盤ですね。ブッシュ大統領自身、石油業界で仕事をしてきましたし、支持母体は石油業界です。
でも、実はここでとれる原油の量は、1日あたり40万バレル。世界の生産量のわずか1%にも満たないのです。
世界の生産量に占める割合は低いのですが、この原油が、ニューヨークの取引所では1日に何回も取引されますから、取引量は、のべにして世界全体の生産量の2倍以上になっているのです。
取引量が圧倒的に多いので、ニューヨークの市場での取引価格が世界の原油の取引価格の指標になっているのです。
新聞の国際経済面に、「WTIの価格が……」という記事がよく出ますが、このことなのですね。
原油価格は投機で上下する
原油が取引所で盛んに取引されているということは、株式市場と同じようなものなのです。
株価が、「これから値上がりしそうだ」「値下がりするかも」という思惑で上下するのと同じように、原油価格も取引参加者の思惑で変動するのです。
夏の観光シーズンが近づくと、夏休みの長距離ドライブに出かける人が増え、ガソリンの需要が高まるため、原油価格も値上がりする傾向があります。
冬の暖房シーズン前にも同じような動きになります。こうした実際の需要の動きによって価格が変動することもありますが、実際の需要とはかけ離れた投機的な動きが起きることもあるのです。
石油精製工場は、産油地に近いアメリカ南部に集中しています。このため、……
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