<1ページ目からの続き> ……中東から東アフリカへの感染拡大が心配されています。 東南アジアでは、すでに流行が始まったおととしからこれまでに、鳥から感染した人間の死者が60人を超えています。 イギリスの経済専門週刊誌「エコノミスト」の10月22日−28日号の表紙は、渡り鳥の写真を背景に、「翼に乗ってインフルエンザの恐怖」という文字が踊っています。鳥インフルエンザの恐怖が、ヨーロッパを、そして世界を襲っているのです。
ウイルスは「寄生」する では、何が心配なのか、まずはウイルスとはどんなものか、という基礎知識から確認しておきましょう。 ウイルスは細菌とは違います。細菌は、ひとつひとつが細胞を持っていて、自ら分裂して増えていきます。 これに対してウイルスは、細胞を持っていません。自分の力では仲間を増やすことができないのです。そこで、“他人”の力を借ります。 ウイルスの大きさは、1ミリの1万分の1という小さなもの。電子顕微鏡でないと見えません。この小さな存在が生き物の細胞に取りつき、細胞の中に入り込むのです。いわば「寄生」です。 細胞を支配したウイルスは、その細胞を使って、自分のコピー(複製)を作らせます。この方法で仲間を増やすのです。これが、とてつもない大量生産。たった1個のウイルスが、わずか24時間で100万個にもなります。 爆発的に増えたウイルスは、用済みになった細胞を破壊して外に飛び出し、それぞれがまた別の細胞に取りついていきます。こうやって、生き物は病気になります。 ウイルスは「変異」する ウイルスは、それぞれの種類によって、取りつく生き物が決まっています。 ところが時々、別の種類の生き物にもうつる力を持つようになります。これが「変異」です。 取りついた細胞で仲間を大量にコピーしているうちに、“コピーミス”が発生します。これまでのウイルスから、まったく別のウイルスが生まれてしまうのです。 これで、今回の騒ぎの理由がわかりますね。鳥インフルエンザが、「人間インフルエンザ」に変異するかも知れないことが恐れられているのです。 いま流行している鳥インフルエンザでも、ベトナムなどでは人間に死者が出ています。インフルエンザにかかったニワトリを世話していた人がウイルスに感染することがあるのです。 ただ、鳥インフルエンザにかかった人から、さらに別の人にうつった……
鳥インフルエンザ―過去のサーベイもチェック!
池上彰の 『解決!ニュースのギモン』